富山市民の歌

富山市民の歌

「富山市民の歌」（とやましみんのうた）は、富山県富山市が1952年（昭和27年）に制定した市民歌です。作詞は奥井友子、作曲は黒坂富治によるものです。しかし、2005年（平成17年）に実施された周辺自治体との新設合併に伴い、現在はその効力を失い、歌われなくなっています。

制定の背景

この歌が作られるきっかけとなったのは、第二次世界大戦末期の富山大空襲による甚大な被害からの復興でした。1945年（昭和20年）8月1日の空襲により、富山市の中心市街地は8割以上が焼け野原となり、地方都市としては類を見ないほどの壊滅的な打撃を受けました。戦後、市ではこの壊滅状態からの復興を最優先課題とし、様々な事業が進められました。その復興のシンボルの一つとして、1954年（昭和29年）に富山産業大博覧会が計画されます。市民歌は、この博覧会開催の二年前にあたる1952年に、博覧会の準備と並行して制定されることになりました。制定された1952年は、日本がサンフランシスコ講和条約の発効により主権を回復したばかりの時期でもありました。歌詞は市民を対象とした懸賞公募によって選ばれた作品で、空襲によって焦土と化した街並みの様子や、そこからの復興への願いが強く込められた、戦後復興色の濃い内容が特徴とされています。

普及と関連楽曲

制定後、「富山市民の歌」はビクターレコード（現在のJVCケンウッド・ビクターエンタテインメント）により、柴田睦陸と池田智恵子という二人の歌手によるデュエットでSPレコード盤が制作されました。当時の（旧）富山市には、この市民歌の他にも市民愛唱歌「とやまの四季」や市民音頭「とやま音頭」といった楽曲があり、これらの二曲も市民歌と同様にビクターからSP盤（V-41032）が発売されていました。これらの楽曲は、長年にわたり市民に親しまれてきました。

平成の大合併による失効

「富山市民の歌」は、制定から52年にわたって富山市民の歌として歌い継がれてきましたが、2005年（平成17年）に平成の大合併の一環として、上新川郡と婦負郡の四町二村と富山市が合併し、新たに（新）富山市が誕生した際に、その位置づけが見直されることとなりました。富山地域合併協議会においては、新市における「市の花、木、花木、歌及び音頭」については、指定の有無を含めて改めて検討することが取り決められました。その結果、市の木は（旧）富山市からケヤキ、市の花木は同じくツバキが引き継がれましたが、市の花については旧構成自治体のいずれにも指定されていなかったヒマワリが新たに定められました。一方で、市民歌や愛唱歌、市民音頭といった楽曲については、（旧）富山市の歌だけでなく、他の旧町村が持っていた歌も含めて、全てが失効扱いとなり廃止されました。合併後、新たな富山市としての市民歌を制定する動きは、新市誕生から15年以上が経過した2020年（令和2年）の時点においても、具体的には見られていません。

現在の富山市と自治体歌

このような経緯から、富山市は現在、佐賀市（1989年制定の市民歌「さがのうた」が合併により失効）と共に、日本の都道府県庁所在地としては数少ない、自治体歌を持たない都市の一つとなっています。さらに、中核市の中では、かつて愛知県豊田市も市歌を制定していませんでしたが、同市が2018年（平成30年）3月に憲章歌として「豊田市民の誓いのうた」を作成したため、現在では富山市が市歌を持たない唯一の中核市となっています。このため、「富山市民の歌」は歴史上の楽曲となり、その役割を終えています。

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関連項目

* 富山県の市町村歌一覧

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