富田城 (伊勢国)

富田城の歴史とその遺構

富田城（とみだじょう）は、三重県四日市市の富田地区に位置していた日本の城で、南部氏の居城として知られていました。城の起源は1204年、三日平氏の乱の際にまで遡ります。当時、伊勢平氏の一党である進士三郎基度が、富田六郷の地域に居館を築いたことが始まりとされます。

その後、1446年に南部三郎行直の子孫である南部修理大夫頼村が、信濃国からこの地に移住し、本格的な城として富田城を再構築しました。頼村は初め室町幕府に仕官し、その後は伊勢国の有力者である北畠家に仕えることになります。こうして南部氏は、その後も富田六郷の東西を治めることで地域の発展に寄与しました。

南部氏の統治と地域発展の背景

南部氏は、富田村の住民から親しまれ、地域の神仏を尊重し、地場産業の振興に努めました。そのため、同地域には南部氏の影響が広がり、近隣の富洲原地区や富田一色村、松原村にもその影響が及びました。周辺の蒔田村には蒔田氏が居城する蒔田城があり、茂福村には朝倉氏による茂福城が存在しました。特に、茂福城と羽津城の領主・田原氏との間で行われた茂福合戦は、地域の歴史において重要な出来事として語り継がれています。

南部氏の衰退と富田城の落城

南部氏は、頼宗から始まり、頼武、頼連、兼綱という系譜を持ち、約120年もの長きにわたりこの地域を支配しました。しかし、1568年、織田信長の伊勢侵攻により、5代目当主の兼綱が自刃することとなり、富田城は落城しました。この結果、南部氏は滅亡し、富田城は廃城となりました。その後、兼綱の孫である甲斐守忠次は仏門に入り、当地で蓮光寺を設立しました。また、別の弟である甚八郎忠明も仏門に入り、四日市市堀木の専念寺に入寺しました。

現在の富田城の跡

現在の富田城の跡地は、近鉄名古屋線や三岐鉄道三岐線の近鉄富田駅の東側で、市立富田幼稚園の近隣に位置していました。しかし、近代化に伴う市街地の発展により、富田城の地割は完全に消失してしまいました。ただし、富田幼稚園の運動場には、かつての名残として銀杏の古木が残存しており、その存在が地域の歴史を物語っています。朝明郡富田の地籍図によると、同じ地域に存在していた茂福城と富田城は形状が類似していたという記録もあり、両城の関係性を伺わせます。

富田城は歴史的にも重要な位置を占めており、地域の文化や歴史に大きな影響を与えたことがうかがえます。

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