富田玲子

富田玲子：建築界のパイオニア、その生涯と作品

富田玲子氏は、1938年生まれの日本の建築家です。類まれな才能と多様な経験、そして女性建築家としての先駆的な道を歩んだ人物として知られています。その生涯と建築家としての活動について、詳しく見ていきましょう。

戦後から東大建築学科へ

富田氏は、日本初の女性大使を務めた高橋展子氏を母に持ち、東京で生まれ育ちました。戦時中は疎開を経験し、その経験が後の建築設計に影響を与えた可能性も考えられます。幼少期から音楽にも親しみ、ピアノを本格的に学ぶなど、多様な感性を育みました。

東京教育大学附属高校を経て、東京大学理科二類に進学。1961年、東大工学部建築学科を卒業。なんと、東大建築学科初の女子学生でした。これは、当時の日本の社会状況を考えると、非常に画期的な出来事だったと言えるでしょう。卒業後は大学院に進学し、建築家の道を歩み始めます。

巨匠たちとの出会い、そして独立

大学院では、当初は吉武泰水研究室に所属していましたが、その後、世界的建築家である丹下健三研究室に移籍。丹下健三氏と共に、ケヴィン・リンチの都市計画に関する著書の翻訳にも携わっています。この経験は、富田氏の建築家としての視座を広げる上で、大きな役割を果たしたと考えられます。

修士課程修了後、吉阪隆正氏の設計事務所に所属。子育てを経験しながらも建築家としての活動を続け、1971年には、象設計集団の設立に参加します。

象設計集団での活躍と独自の建築

象設計集団設立後は、数々のプロジェクトに携わり、その建築設計は高い評価を得ています。初期には住宅設計を中心に、ドーモアラベスカ、ドーモ・セラカント、ドーモ・パレーラなど、個性豊かな作品を手がけました。これらの作品は、富田氏の建築哲学を明確に示すものと言えるでしょう。

教育活動と多様な活動

設計活動以外にも、マサチューセッツ工科大学、ペンシルベニア大学、東京大学、早稲田大学などで客員講師を務めるなど、教育活動にも積極的に取り組んできました。後進の育成にも尽力し、建築界の発展に貢献しています。

まとめ

富田玲子氏は、女性建築家として、そして時代を切り開く先駆者として、日本の建築界に大きな足跡を残しました。その活動は、建築設計にとどまらず、教育、翻訳など多岐にわたります。彼女の作品や活動は、現代建築を考える上で重要な指標となるでしょう。

代表作

ドーモアラベスカ
ドーモ・セラカント
ドーモ・パレーラ
脇田邸
船曳・岸田邸

著書

都市のイメージ（共訳）
小さな建築
象設計集団『空間に恋して』（共著）

富田玲子氏の建築家としての歩みは、日本の建築史において重要な位置を占めるだけでなく、女性が活躍する道を切り開いたという意味でも、大きな意義を持つと言えるでしょう。今後の建築界の発展にも、大きな影響を与え続ける存在です。

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