富田達夫

富田 達夫

日本の著名な技術者であり、経営者。1949年（昭和24年）7月5日生まれ。東京都の出身。

経歴

学歴と初期キャリア

富田達夫氏は、1972年（昭和47年）12月に東京大学理学部物理学科を卒業した。翌年の1973年（昭和48年）12月には、大手電機メーカーである富士通株式会社に入社。以来、情報技術（IT）に関連する製品開発の最前線でキャリアを積み始めた。

富士通での活躍

富士通では、一貫してIT分野の製品開発に深く関与し、その過程で経営の中枢へと進んでいった。特に、社会基盤を支える極めて重要なミッションクリティカルシステム分野や、当時急速に市場が拡大していた携帯電話事業をはじめとするコンシューマー向け製品領域において、新たな事業の立ち上げや既存事業の拡大を主導するなど、経営幹部として重要な役割を果たした。最終的には、富士通が展開する全てのプロダクト事業を統括する責任者として、その手腕を発揮した。

富士通在籍中には、様々な要職を歴任している。具体的には、経営執行役兼モバイルフォン事業本部長、経営執行役常務兼システムプロダクトビジネスグループ長、取締役副社長（プロダクトビジネスグループ担当）兼ユビキタスプロダクトビジネスグループ長、そして代表取締役副社長兼プロダクトビジネスグループ担当などを務めた。また、同社の研究開発を担う富士通研究所においても、代表取締役社長および取締役会長を務め、技術革新の推進にも貢献した。

公職と社会貢献

富士通での要職を務める傍ら、産業界の発展にも積極的に関わった。産業競争力懇談会の実行委員会委員、日本経済団体連合会（経団連）の産業技術委員会企画部会委員、日本学術振興会協力会評議員といった公的な役職を歴任。これらの活動を通じて、情報処理技術のさらなる発展を促進するとともに、日本の産業界全体の競争力強化にも深く関与した。

情報処理分野への貢献

富田氏は、情報処理技術の普及と人材育成にも尽力している。特に、情報処理学会においては、第28代会長を務めた。会長任期中には、情報教育分野への取り組みを強化し、次世代を担うジュニア会員向けの施策を推進したほか、初等・中等教育における情報教育への支援体制構築に注力した。また、情報処理技術者のスキルを評価・証明する認定情報技術者制度の運営にも携わり、若手研究者と企業を結びつけるマッチングサービス導入など、情報処理技術者の育成と彼らが活躍できる場を広げるための様々な事業に寄与した。

さらに、技術系人材の質向上と適正な評価を目指す日本技術者教育認定機構においても委員を務め、技術者の育成基準策定や表彰制度を通じて、技術系人材の質向上に貢献している。

学術的な面でも研鑽を積み、2015年（平成27年）3月には静岡大学大学院自然科学系教育部情報科学専攻の博士課程を修了している。

情報処理推進機構 (IPA) 理事長

2016年（平成28年）1月5日には、情報処理技術の振興やサイバーセキュリティ対策などを推進する独立行政法人情報処理推進機構（IPA）の理事長に就任した。2018年（平成30年）4月1日には理事長に再任され、通算で約7年間にわたりIPAの組織運営と事業執行を統括した。2023年（令和5年）3月31日をもって同職を退任した。

長年にわたり、情報技術の最前線から経営、そして産業振興や人材育成に至るまで、幅広い分野で日本の情報化社会の発展に多大な貢献を果たした人物である。

もう一度検索