富谷茶

富谷茶（とみやちゃ）

富谷茶は、宮城県富谷市しんまち地区周辺で栽培・製茶されている日本茶のブランドです。その歴史は古く、仙台藩の祖である伊達政宗公が京都から茶の木の苗を取り寄せ、領内での栽培を奨励したことに始まると伝えられています。

歴史

江戸時代、各藩は領内での茶の自給自足を目指し、茶の栽培を奨励していました。富谷茶もその流れの中で発展した、東北地方における茶の名産地のひとつでした。

奥州街道を行き交う旅人にも親しまれ、道中歌には「国分の町よりここへ七北田よ 富谷茶のんで味は吉岡」と詠まれています。これは、旅人たちが富谷茶を楽しみ、その味を称賛していたことを物語っています。また、富谷茶は品質が高かったため、仙台藩主への献上品や、京都への出荷も行われていたそうです。

しかし、東北地方の冷涼な気候は茶の栽培には不利であり、年に一度の茶摘みが限度でした。温暖な気候の地域と比較して生産性が低く、明治時代以降の物流の発達とともに、中部・関西地方からの茶が流入するようになると、次第に衰退していきました。

1970年代には、富谷茶の栽培・製茶は途絶えてしまいます。しかし、2017年、富谷宿の開宿400年を記念するイベントの一環として、「とみや茶復活プロジェクト」が立ち上がりました。地元の高齢者を中心に、往年の富谷茶の栽培技術を持つ人々が中心となり、栽培を復活させました。

2018年には、復活後初となる茶摘みと製茶が行われました。栽培には、地元に残っていた在来種の茶の木が用いられています。また、日本紙通商株式会社との間で再生技術協力協定が締結され、その技術支援も得ています。

2023年には、国際スローフード協会の味の箱舟に登録され、その価値が見直されています。

現状

2020年時点での富谷茶の茶の木は3000本、栽培面積は3000平方メートルとなっています。往年のように大規模な生産は行われていませんが、地元の人々の手によって大切に育てられています。

かつて奥州街道の旅人を癒やした富谷茶。その歴史と伝統を受け継ぎ、新たな時代に向けて歩み始めています。

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