寛喜の飢饉

寛喜の飢饉とは

寛喜の飢饉は、1230年（寛喜2年）から1231年（寛喜3年）にかけて発生した、鎌倉時代を通じて最大規模の大飢饉です。この飢饉は、異常気象による農作物の不作が主な原因となり、全国各地で深刻な食糧不足と多数の餓死者を出しました。

飢饉の背景

飢饉が発生する以前から、日本国内では天候不順が続いており、社会全体が疲弊した状態にありました。1229年には、飢饉を理由に年号が安貞から寛喜に改元されています。しかし、改元後も天候は回復せず、1230年6月には美濃国や武蔵国で雪が降るという異常気象に見舞われました。その後も長雨や冷夏が続き、農作物は壊滅的な被害を受けました。

飢饉の状況

『吾妻鏡』によると、1230年の夏には、霜が降りるほどの寒さとなり、大雨や暴風雨も相次ぎました。これにより、農作物は収穫の見込みがなくなり、人々の食糧事情は急速に悪化しました。特に深刻だったのは、翌1231年の春で、備蓄していた食料が底をつき、多くの人々が餓死しました。当時の記録には「天下の人種三分の一失す」とあり、その規模の大きさを物語っています。

この飢饉は、単に食糧不足を引き起こしただけでなく、社会全体に大きな混乱をもたらしました。人々は生きるために、富豪の家に仕えたり、妻子を売ったりするなどの行為に及び、社会問題化しました。また、飢饉によって多数の餓死者が出たため、その死臭が都にまで及んだとされています。

幕府の対応

幕府は、この事態を重く見て、備蓄米の放出や国土豊穣の祈祷などを行いました。また、人身売買が横行する状況を鑑み、飢饉の期間中は人身売買を例外的に容認する措置を取りました。しかし、飢饉が終息した後には、人身売買の禁止を改めて宣言し、社会秩序の回復に努めました。富裕層の中には、幕府の政策に協力し、民衆に食糧を分配した者もいましたが、その一方で、飢饉の混乱に乗じて人々を安く買い叩く者もいたため、幕府は、人身売買の買い戻し価格を高く設定し、混乱を収束させようとしました。

飢饉の影響

この飢饉は、社会に大きな影響を与えました。幕府は、飢饉による社会不安を背景に、御成敗式目を制定し、社会秩序の安定を目指しました。また、宗教界にも影響を与え、親鸞が東国で「絶対他力」を提唱する背景には、この飢饉の惨状があったと指摘されています。民衆の間では、飢饉の原因を神仏の怒りによるものと捉える動きもあり、石合戦を禁じた幕府への不満が高まったため、一時的に石合戦の禁止を緩める措置も取られました。

飢饉の終息

飢饉は、1231年の晩夏頃には一服したものの、その後も種籾不足や旱魃が重なり、人々の生活は依然として困窮した状態が続きました。飢饉の影響は、1239年頃まで続いたと考えられています。

寛喜の飢饉は、鎌倉時代における未曽有の災害であり、その後の社会や文化に大きな影響を与えた出来事でした。

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