寧宗 (宋)

南宋の皇帝、寧宗

寧宗（ねいそう）は、南宋の第4代皇帝であり、光宗の次男として生まれました。彼の治世は、政治的な混乱と権力闘争、そして外敵との戦いに彩られた時代でした。

生い立ちと即位

寧宗は、乾道4年（1168年）に、当時の恭王であった光宗と李氏の間に誕生しました。幼少の頃から明州観察使、英国公、安慶軍節度使、平陽郡王と順調に昇進し、光宗の即位後には少保・武寧軍節度使、そして嘉王に封じられました。しかし、光宗が嘉王を皇太子に立てようとした際、寿皇（孝宗）が反対したため、その立場は微妙なものとなりました。紹熙5年（1194年）、病弱であった光宗が、趙汝愚と太皇太后呉氏によって廃位されると、寧宗は皇帝として即位しました。

韓侂冑の専横と北伐

即位後、寧宗は韓侂冑（かんたくちゅう）の影響下に入ります。韓侂冑は、政変の過程で力を得て、権力を独占しました。彼は政敵を排除し、朱熹をはじめとする理学者を追放するなど、強引な政治を行いました。開禧元年（1205年）には、平章軍国事に任ぜられ、さらに権力を強めました。韓皇后の死後、後ろ盾を失った韓侂冑は、自身の権力を維持するために、金に対する大規模な北伐を強行しました。しかし、準備不足と情報不足から戦況は悪化し、四川の呉曦が反乱を起こすなど、事態は深刻化しました。

史弥遠による権力掌握

北伐の失敗後、朝廷内では韓侂冑に対する不満が高まりました。皇后の義兄であった楊次山と礼部侍郎の史弥遠は、韓侂冑を誅殺し、その首を金に送ることで和議を結び、朝廷の実権を掌握しました。その後、史弥遠が宰相として国政を専断するようになり、寧宗の政治的影響力は薄れていきました。

後継者問題

寧宗には9人の息子がいましたが、いずれも夭折しました。そのため、趙徳昭の末裔である趙詢（景献太子）を養子として迎え、皇太子に立てました。しかし、趙詢が亡くなると、今度は趙徳芳の九世の孫である趙竑（趙希瞿の実子）を後継者としました。しかし、趙竑は史弥遠を牽制しようとしたため、警戒され、史弥遠は趙徳昭の九世の孫である趙昀（後の理宗）を民間から探し出しました。そして、嘉定17年（1224年）に寧宗が崩御すると、史弥遠は遺詔を偽造し、趙竑を廃して趙昀を皇帝に擁立しました。

人物像

寧宗は、即位前に高宗の霊柩を葬るために紹興に行った際、農民が苦労して働いている姿を見て、「宮中にだけ住んでいたのでは、この苦労を知ることができない」と嘆いたと言われています。また、恭倹な性格で、節制された生活を送り、民を思う心を持っていたと伝えられています。小正月の夜、蝋燭を灯して座っていた際に、宦官から宴会を勧められましたが、「外間の民は食べ物がない」と拒否しました。また、聚景園への行幸で群衆が圧死する事故が起きた際には、その不祥事を悔やみ、皇宮外への出入りを控えるようになったと伝えられています。

「吐くのが恐いなら酒を少なく飲み、痛みが恐いなら冷たいものを少なく食べる」という信条を記した屏風を常に持ち歩き、酒を飲んでも3杯以上は飲まなかったと伝えられています。西湖で遊覧しようとした際には、慈懿皇后の陵墓が湖畔にあることを指摘されると、追悼の意味がなくなると即座に断念しました。

宗室

后妃
正室：韓皇后（恭淑皇后）
継室：楊桂枝（恭聖仁烈皇后）
側室：婕妤曹氏、夫人鍾氏
美人閻氏、才人呉氏
紅霞帔張氏、紅霞帔王氏、紅霞帔田氏、紅霞帔包氏
紫霞帔王氏、紫霞帔呉氏、紫霞帔王氏、紫霞帔張氏、紫霞帔王氏
聴宣楊氏、聴宣張氏、聴宣史氏

子女
長男～九男（すべて夭折）
長女：祁国公主（夭折）

養子
趙詢（景献太子）
趙竑（済王）
趙昀（理宗）

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