寧辺核施設

寧辺核施設の概要

寧辺核施設（ニョンビョンかくしせつ）は、北朝鮮に位置する重要な原子力研究施設です。この施設は、北朝鮮で初めて動き出した原子炉が設置されている場所であり、平壌から北へ約80キロメートルの地点にあります。施設は8.92平方キロメートルの広さを持ち、約2,000人のスタッフが働いているとされています。ここで生産された核物質は、2006年以降の北朝鮮の核実験に使用されました。

施設の構造

寧辺の核施設は、核燃料の製造から再処理に至るまでの一連のプロセスを行うための施設が完備されています。主要な施設には、核燃料製造工場、5メガワット原子炉、使用済み核燃料の再処理工場が含まれます。

IRT-2000研究炉

IRT-2000は、ソ連が設計した研究用原子炉で、1965年に初めて臨界に達しました。この炉は、2,000キロワットの熱出力を持ち、主に医療目的で使用される放射性同位体の生成に使われました。技術の進歩により、熱出力は8,000キロワットにまで増加しましたが、近年の使用はほとんどありません。

5メガワット原子炉

この原子炉の建設は1979年に始まり、1985年に稼働を開始しました。これは、エネルギー生産のために設計されたもので、核燃料は天然ウランを使用し、最大8,000本の燃料棒を用いてプルトニウムを生産します。この炉は、年間で約5.5〜8.5キログラムのプルトニウムを生成可能です。

この原子炉は2007年に運転が停止されましたが、2009年に再処理のための部分的復旧が行われ、2015年には運転再開が発表されています。

50メガワット原子炉

寧辺には、計画されていた50メガワットの原子炉も存在しましたが、建設は米朝枠組み合意により中断され、その後も進展はありませんでした。この炉が完成していた場合、年間200キログラムのプルトニウムを生産する能力があったとされています。

使用済み核燃料の再処理

寧辺には使用済み核燃料の再処理工場もあり、PUREX法を用いてプルトニウムが抽出されています。年間200〜250トンの核燃料を再処理する能力があるとされ、再処理によって得られるプルトニウムの量は議論の対象となっています。

歴史的経緯

北朝鮮での原子力研究は1956年に始まり、1965年には最初の原子炉が運転を開始しました。その後、5メガワット原子炉が稼働し、目的は主に核兵器の生産にありました。1994年の米朝枠組み合意によって一時的な停止がありましたが、2003年には運転が再開され、続いて核物質が生産されました。

その後、寧辺核施設は国際社会との緊張関係の中で大きな注目を浴び、2007年には無能力化されましたが、その後も再稼働の動きが続きました。特に、2019年の米朝首脳会談では、寧辺の核施設についての廃棄提案が出されるも合意には至らず、現在もその存在が問題視されています。

現在の状況

最近の報告によれば、2021年から原子炉が再稼働している可能性があり、新たなウラン濃縮施設の建設も進んでいるとのことです。国際原子力機関（IAEA）も、この動向を注視しており、平和的な核利用の実現が求められています。このように、寧辺核施設は北朝鮮の外交と安全保障において重要な役割を果たし続けています。

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