PUREX法とは？意味をやさしく解説 - サードペディア百科事典

PUREX法（ピューレックス法）とは

PUREX法（Plutonium Uranium Redox EXtraction）は、使用済み核燃料からプルトニウムとウランを分離・精製する化学的プロセスです。この方法は、核燃料再処理におけるデファクトスタンダードとなっており、世界中の再処理施設で広く採用されています。

PUREX法の開発

PUREX法は、マンハッタン計画中にグレン・シーボーグの指揮下で開発されました。ハーバート・H・アンダーソンとラーンド・B・アスプレイによって考案されたこの技術は、1947年に特許が申請され、リン酸トリブチル（TBP）を主要な反応剤とする液液抽出法が確立されました。

PUREX法の概要

使用済み核燃料には、ウランなどの重い元素（アクチノイド）と、核分裂反応で生成された軽い元素（核分裂生成物、FP）が含まれています。PUREX法では、これらの混合物からウランとプルトニウムを分離し、再利用可能な核燃料を回収します。

抽出原理

PUREX法の基本は、イオン交換を利用した液液抽出です。まず、使用済み核燃料を硝酸に溶解させ、溶媒としてリン酸トリブチル（TBP）を溶解させた炭化水素系溶媒を加えます。ウランとプルトニウムはTBPと錯体を形成し、有機相に抽出されます。核分裂生成物は水相に残るため、有機相を分離することで、ウランとプルトニウムを他の物質から分離できます。

プルトニウムとウランの分離

分離された有機相に還元剤を加えることで、プルトニウムを+3価に還元し、水相に逆抽出します。一方、ウランはその後、水または希硝酸で有機相から逆抽出され、プルトニウムと分離されます。この分離には、スルファミン酸第一鉄、硝酸ウラナス-硝酸ヒドラジン混合液、硝酸ヒドロキシルアンモニウムなどの試薬が利用されます。

TBPの分解と影響

PUREX法では、リン酸トリブチル（TBP）が放射線によって分解され、リン酸ジブチルを生成します。リン酸ジブチルは金属と錯体を形成しやすく、分離を妨げる原因となります。そのため、複数回の分離操作が必要となる場合があります。

PUREXラフィネート

PUREX法でウランとプルトニウムを分離した後に残る廃液をPUREXラフィネートと呼びます。これには、核分裂生成物や微量の未分離アクチノイド、配管の腐食成分などが含まれ、高レベル放射性廃棄物として処理されます。

PUREXラフィネートの組成

PUREXラフィネートには、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウムなどの核分裂生成物が含まれます。また、鉄やニッケルなどの配管腐食物、微量のウラン、プルトニウム、マイナーアクチノイドも含まれます。このラフィネートは、ガラス固化体として処分されます。

PUREX法の応用と課題

PUREX法は、核兵器の製造にも利用される可能性があるため、関連する化学物質は厳重に監視されています。また、処理過程で発生する放射性廃棄物の管理や、技術的な改良も重要な課題です。

テクネチウムの抽出

PUREX法では、イオン対抽出法を用いてテクネチウムを過テクネチウム酸塩として抽出することも可能です。この際、レニウムを用いることで、テクネチウムを他の金属から分離することができます。

核再処理施設

PUREX法は、世界各地の核再処理施設で利用されています。代表的な施設としては、ラ・アーグ再処理工場、マヤーク核技術施設、東海再処理施設などがあります。

参考文献

OECD Nuclear Energy Agency, The Economics of the Nuclear Fuel Cycle, Paris, 1994
I. Hensing and W Schultz, Economic Comparison of Nuclear Fuel Cycle Options, Energiewirtschaftlichen Instituts, Cologne, 1995.
Cogema, Reprocessing-Recycling: the Industrial Stakes, presentation to the Konrad-Adenauer-Stiftung, Bonn, 9 May 1995.
OECD Nuclear Energy Agency, Plutonium Fuel: An Assessment, Paris, 1989.
National Research Council, "Nuclear Wastes: Technologies for Separation and Transmutation", National Academy Press, Washington D.C. 1996.
小島久雄 (2008年7月). “核燃料サイクル工学概論” (pdf). JAEA-Review. 日本原子力研究開発機構. 2016年1月10日閲覧。

PUREX法