寺尾新

寺尾 新

寺尾 新（てらお しん）は、1970年12月24日生まれ、東京都八王子市出身の日本の格闘家です。彼はキャリアを通じてキックボクシング、プロボクシング、プロレス、そして総合格闘技といった複数の競技で活躍しました。プロボクサー時代には日本フライ級ランキングで最高2位に位置し、キックボクサーとしてはUKF東洋フェザー級の初代王座を獲得するなど、各分野で実績を残しています。

彼の格闘技キャリアは、21歳の時にキックボクシングから始まりました。名門・伊原道場の門を叩き、プロキックボクサーとしてリングデビューを果たします。初期のキャリアで8戦を経験し、その実力を認められて日本キックボクシング連盟のランキングに名を連ねる活躍を見せました。

1995年、寺尾はプロボクサーへの転身を決意します。彼は地元八王子に開設されたばかりの八王子中屋ボクシングジムへと移籍しました。このジムの第一号プロ選手として、同年9月22日にプロボクシングデビュー戦を行い、見事に勝利を収め、新たなキャリアのスタートを切りました。しかし、続く2戦目では初めてのKO負けを喫し、プロボクシングの厳しさも経験しました。その後もキャリアを積み重ね、日本のフライ級戦線で頭角を現し、ランキング上位に進出していきます。

プロボクシングキャリアにおいて、特に記憶に残る一戦が1998年5月18日に行われました。場所は日本のボクシング聖地である後楽園ホール。対戦相手は当時、OPBF東洋太平洋フライ級王者であり、WBAで5位、WBCで7位という世界ランキングにも名を連ねていたマニー・パッキャオでした。このノンタイトル戦で、寺尾は後の世界的なスーパースターとなるパッキャオの猛攻を受け、わずか1ラウンドで3度のダウンを奪われ、2分59秒でKO負けを喫しました。この一戦は、パッキャオがその後の輝かしいキャリアの中で日本国内で行った唯一の公式試合であり、彼と日本のリングで拳を交わしたただ一人の日本人選手として、寺尾新の名前は日本のボクシング史に特筆されています（ただし、日本出身の選手という意味では、在日コリアンの千里馬哲虎がフィリピンでパッキャオと対戦しています）。

1999年7月3日には、プロボクサーとしての集大成ともいえる試合に挑みました。当時日本フライ級王座を保持していたセレス小林に対し、指名挑戦者としてタイトルマッチに臨んだのです。しかし、この試合でもセレス小林の前に9ラウンドでTKO負けを喫し、王座獲得はなりませんでした。この試合を最後に、寺尾はプロボクサーとしてのキャリアに終止符を打ちました。プロボクシングでの通算戦績は16戦10勝（1KO）5敗1分という記録を残しました。

プロボクシング引退後も、寺尾の格闘家人生は続きました。彼は活躍の場をプロレスの世界へと移し、主にインディペンデント団体で活動を展開しました。また、リングでの戦いだけでなく、総合格闘技の舞台にも挑戦するなど、ジャンルに囚われない多様な活動を精力的に行いました。

そして、2005年頃からは再びキックボクシングのリングへの復帰を目指します。横浜アリーナジムなどでトレーニングを積み重ね、本格的なカムバックを果たしました。復帰後のリングでも、2006年9月23日には羽田真宏選手（白龍ジム会長）との間で、通常のルールとは異なる変則的なミクストルールマッチを行うなど、新たな試みにも積極的に挑戦しました。2007年9月2日には、UKFジャパンによって認定された初代UKF東洋フェザー級王座決定戦に出場し、勝利を収めてチャンピオンとなりました。これは、ボクシング引退後にキックボクシングで再び頂点に立った証であり、彼の多才なキャリアにおける新たな勲章となりました。

寺尾新は、キックボクシングでキャリアをスタートさせ、プロボクシングで日本タイトル挑戦や後の世界王者パッキャオとの対戦という歴史的な一戦を経験し、引退後はプロレスや総合格闘技にも活動の幅を広げ、最終的には再びキックボクシングのリングで王座を獲得するなど、類稀なる格闘家人生を歩んだ選手と言えるでしょう。

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