寺尾正・文姉妹

寺尾正・文姉妹の伝説

寺尾正（てらお きみ）と文（ふみ）は、日本の陸上競技界において特に注目を集めた一卵性双生児の姉妹です。彼女たちは1911年11月7日、東京府本所区に生まれました。家族は牛乳販売店を営む平凡な家庭でしたが、姉妹の運命は陸上競技によって大きく変わりました。

競技者としての経歴

二人は地元の小学校に通い、1920年代初頭には東京都立第一高等女学校で学びながら陸上競技に打ち込みました。特に、1924年に開催された第2回女子選手権では、姉の正が50ｍで、妹の文が100ｍでそれぞれ日本タイ記録を樹立し、優勝を果たしました。この大会は彼女たちの競技人生の始まりを示す大きなターニングポイントとなりました。

その後、1925年には記録を次々と更新。文は100ｍで新たな日本記録13秒2を記録し、姉妹揃って200ｍリレーでも優勝しました。彼女たちの活躍は、競技会が開催される度に新しい歴史を刻み、この時代の女子陸上競技の光明となったのです。

父母の影響と早期の引退

しかし、競技生活は順調とはいきませんでした。寺尾家の両親は、娘たちに過度な注目を浴びさせることを憂い、競技への情熱が高まる中、やがて姉妹は事実上、競技からの引退を決意します。彼女たちの引退は、彼女たちが20歳と18歳のときで、将来へ向けた新たな選択肢を模索するきっかけともなりました。その後、正は前田氏と、文は有賀氏と結婚し、新たな生活を迎えることになります。

芸術との関わり

興味深いエピソードとして、1928年には作家・久米正雄の小説『双鏡』が発表され、寺尾姉妹がモデルとして描かれました。この作品は家族からの抗議を受けたため休載になったとのことですが、実際には年末まで連載が続けられました。このように、姉妹の存在は陸上競技のみならず、文化面でも影響を与えたと言えるでしょう。

当時の競技界との交流

寺尾姉妹は、競技生活の中で人見絹枝という優れた選手と競い合う関係にありました。人見は当時のオリンピック選考競技会の前に寺尾家を訪問し、姉妹を説得する場面もあったとのことです。このように、彼女たちは多くの選手と関れ、多くの人々に影響を与え続けました。

まとめ

寺尾正・文姉妹は、日本陸上競技界において非常に重要な存在だったと言えます。彼女たちの記録やエピソードは、単なる数値に留まらず、多くの女子選手にとってのロールモデルとなり、陸上競技への道を開いたのです。彼女たちの若い頃の情熱と努力は、これからの時代にも伝えられていくことでしょう。

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