寺田康彦

寺田康彦：音楽を彩る名エンジニアの軌跡

寺田康彦（1954年1月27日生まれ）は、日本の音楽業界において、レコーディング・エンジニアとして、またシンクシンクインテグラルの代表として、重要な役割を果たしてきた人物です。彼のキャリアは、単に技術者としてだけでなく、教育者、ミュージシャン、プロデューサーとしての顔も持ち合わせており、日本の音楽文化に深く貢献しています。

キャリアの始まり

寺田は学生時代に放送、映画、演劇といった分野を学び、音響技術の基礎を築きました。1975年にアルファレコードの前身であるアルファ・アンド・アソシエイツに入社し、荒井由実、ハイ・ファイ・セット、吉田美奈子といったアーティストのレコーディング・アシスタントとしてキャリアをスタートさせました。この時期に、彼はレコーディング技術の基礎を徹底的に習得し、その後の活躍の礎を築きました。

アルファレコード時代

アルファレコード在籍中には、カシオペア、YMOといった先駆的なアーティストの作品を手がけました。特にYENレーベルのアーティストや、ソフトバレエ、PINKなどのミキシングを担当したことは、彼のキャリアにおいて重要な転換期となりました。これらの仕事を通じて、寺田は多様なジャンルの音楽に対応できる柔軟性と、高度な技術力を身につけていきました。

シンクシンクインテグラルの設立

1992年、寺田はプロジェクト・スタジオの先駆けとも言えるシンクシンクスタジオを設立。さらに1994年には、エンジニア／クリエイター集団であるシンクシンクインテグラルを設立しました。この集団の名付け親は細野晴臣であり、寺田の幅広い人脈と才能が結集した結果と言えるでしょう。シンクシンクレコードからは21枚のアルバムをリリースし、独自の音楽世界を展開しています。

ミュージシャンとしての活動

1995年、石田ショーキチ（ギター＆ボーカル）と吉澤瑛師（キーボード）と共にスクーデリアエレクトロ（Scudelia Electro）を結成。2005年の解散まで、CDリリースやライブでのDUBパフォーマンスなど、多彩な活動を展開しました。このバンドでの活動は、寺田の音楽的な探求心と実験精神を示すものであり、彼の多才さを示す一例と言えるでしょう。

教育者としての貢献

2004年からは、くらしき作陽大学音楽学部の特任教授として、後進の育成にも力を注いでいます。学内にスタジオ設備を整え、音楽制作やスタジオ録音の授業を行うことで、次世代の音楽家たちの育成に貢献しています。教育者としての寺田は、技術だけでなく、音楽に対する情熱や創造性を学生たちに伝えています。

近年の活動

近年では、大貫妙子トリビュートでのティン・パン・アレイ、松任谷由実とのレコーディングや、矢野顕子のアルバム制作に参加するなど、ベテランアーティストとの共演も積極的に行っています。また、アニメ「ウイッチクラフトワークス」ED曲や、「おそ松さん」のED曲「SIX SAME FACES 〜今夜は最高！」、上坂すみれ「恋する図形」、有形ランペイジの楽曲など、幅広いジャンルの作品を手がけています。さとうもかのインディーズでのファースト・アルバム『THE WONDERFUL VOYAGE』のプロデュースや、ボカロPの雄之助を世に送り出すなど、若い音楽家の育成にも力を注いでいます。

寺田康彦は、レコーディング・エンジニアとして、プロデューサーとして、教育者として、そしてミュージシャンとして、多岐にわたる才能を発揮し、日本の音楽シーンに多大な影響を与え続けています。彼の飽くなき探求心と、常に新しい才能を育てようとする姿勢は、多くの人々に刺激を与え、これからの音楽界を担う人材を育成していくことでしょう。

もう一度検索