対岸経営

対岸経営とは

日本の台湾統治時代における「対岸経営」は、台湾の総督府が陸続きの福建省に対し、経済を通じて影響力を拡大しようとした方針を指します。この取り組みは、特に軍事的手段ではなく、経済活動を重視していました。対岸の経済圏に焦点を当てたこの政策は、日本の影響を効率的に広げる手段として機能しました。

背景

台湾が日本に統治されて以来、1902年頃までは、台湾人による武装抗日運動が福建省に逃げ込んでいました。この状況を受けて、総督府は台湾内の治安を保つだけでなく、中国大陸に対する影響力を強めるために福建省と特に廈門に注目しました。1900年には義和団事件に便乗して廈門を占拠しようとしましたが、それは失敗に終わり、以後は経済面からのアプローチを取ることになります。その結果、1902年には福建省の廈門に「三五公司」という実行機関が設立され、経済活動が展開されることとなりました。

三五公司の設立

三五公司は、当初日本と中国の合弁会社の形をとっていましたが、実質的には国家の意図を強く含んだ機関でした。初代の首脳者には愛久澤直哉が選ばれ、彼の指導のもと、福建省における経済事業が展開されました。

三五公司の主な事業

樟脳専売事業

三五公司的な事業のひとつに、福建省での樟脳の専売がありました。樟脳は台湾の特産物であり、当時の台湾総督府の財政に大きな影響を与えるものでした。1901年、上海に住んでいた台湾の名望家・林朝棠が樟脳の専売権を尖獲るために総督府から資金援助を求めるも、結果として愛久澤が任命されました。愛久澤はこの専売事業の実行者となり、官脳局を通じて樟脳の輸出を進め、事業は順調に進捗しました。

潮汕鉄道の経営

また、三五公司は福建省での潮汕鉄道の敷設にも関与しました。日清戦争後、日本は中国大陸に進出するために鉄道建設を行い、福建省が初めのターゲット地となっていました。潮汕鉄道の敷設権は地域の華僑グループに与えられましたが、愛久澤は資金を出資し、契約を急ぐなどして、総督府と連携しながら工事を進めました。この鉄道は1906年に完成し、三五公司が営業権を取得しました。

その他の取り組み

三五公司はそれ以外にも、教育機関である東亜書院の設立や、各種の経済事業にも手を広げていました。南洋華僑の資金集めを目的とした銀行の設立など、地域経済を活性化させるための試みが行われました。

事業の撤退

しかし、事業は次第に困難を極めました。特に樟脳の輸出量が減少し、国際市況の低迷や清国政府からの反発も影響しました。その結果、1910年には樟脳専売事業が中止され、潮汕鉄道も様々な問題に見舞われて利益が上がらず、最後には三五会社全体に対して支援が減少し、事業からの撤退が余儀なくされました。

結論

対岸経営は台湾の歴史において重要な役割を果たしましたが、三五会社の活動は最終的に困難にぶつかり、経済面での影響力を維持することができなかったという結果に終わりました。その背景には、様々な経済的要因や国際的な政治環境の変化があったことが考えられます。

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