対日照

対日照（たいにちしょう）

対日照は、地球から見て太陽とほぼ正反対の方向、天球上に見られる光の領域です。ドイツ語では「gegenschein（ゲーゲンシャイン）」、英語でも同じく「gegenschein」と呼ばれます。その読み方には「たいにちしょう」のほか、「たいにっしょう」「たいじつしょう」など、いくつかのバリエーションが存在します。この現象は、夜空の比較的暗い場所で、黄道光の延長線上に見える、面積を持った、かすかな輝きとして観測されます。

観測の条件

対日照は、本来であれば肉眼でも捉えられる現象ですが、その光は天の川よりもずっと淡いため、観測には人工光の少ない、非常に暗い夜空が不可欠です。現代の多くの地域、特に日本のように都市化が進み、夜間の人工光による光害が深刻な場所では、夜空が極端に明るくなってしまっています。このような環境では、対日照のような淡い光を観測することは極めて困難であり、ほとんど不可能に近いとされています。観測を試みる際は、新月の頃、空が最も暗くなる時間帯に、都市の光から十分に離れた場所を選ぶ必要があります。

対日照の正体

現在、対日照の最も有力な説として受け入れられているのは、地球軌道に近い宇宙空間に漂っている微細な塵、すなわち惑星間物質が太陽光を反射・散乱している光であるというものです。これらの塵は、主にセンチメートルからマイクロメートル程度の大きさを持っています。対日照は、黄道光の一部であり、太陽系の内側にある惑星間物質による散乱光が広く分布して見えているものです。特に、地球から見て太陽とほぼ正反対の方向にある塵は、ちょうど満月が太陽光を正面から反射するように、光を最も効率よく地球に向けて反射するため、この領域の輝きが周囲よりもやや明るく見えると考えられています。これが、対日照として認識される独特の輝きを生み出しているのです。

かつて考えられていた説とその否定

過去には、対日照の原因についていくつかの異なる説が提唱されていました。

地球の尾説: 地球の高層大気が太陽風によって宇宙空間に吹き流され、「地球の尾」と呼ばれる構造を作り、この尾が高エネルギーの粒子と反応して発光しているという説がありました。
ラグランジュ点L2集積説: 太陽と地球の間には、重力のバランスによって特定の点が安定して存在する「ラグランジュ点」があります。特に、太陽と地球を結ぶ直線上、地球の太陽とは反対側にあるL2点に惑星間物質が多く集積しており、それが見えているという説も存在しました。

しかし、これらの説は、地球を遠く離れて宇宙空間を航行する惑星探査機による観測によって、ほぼ否定されました。探査機が地球上と同じ方向に対日照を観測できたことから、その原因が地球周辺の特定の構造や、地球-太陽系の特定の重力点に限定されるものではないことが示されたのです。現在の定説である、広範囲に分布する惑星間物質による太陽光の散乱という説明が、探査機による観測結果とも矛盾しないため、広く受け入れられています。

対日照は、黄道光と同様に、太陽系の惑星間空間に存在する微細な物質の存在を示す現象であり、私たちの太陽系を取り巻く環境を理解する上で重要な手がかりの一つとなっています。しかし、その観測の難しさから、多くの人々にとってあまり馴染みのない天文現象と言えるでしょう。

関連事項

小惑星
彗星
* 黄道光

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