寿曽我対面

寿曽我対面について

「寿曽我対面」（ことぶき そがのたいめん）は、日本の伝統的な歌舞伎の演目の一つです。この演目は、特に曽我兄弟の復讐劇として広く知られています。また、略称として「曽我の対面」や「対面」としても呼ばれます。

初演と歴史

初演は延宝4年（1676年）の正月に江戸中村座で行われ、以来、歌舞伎の人気演目の一つとなりました。特に享保の時代からは、「曽我狂言」が正月興行で恒例として演じられるようになり、多くの演出が加えられてきました。500作品以上にわたる派生型があったとも言われ、各地で様々なスタイルで演じられています。

現在演じられている版は、河竹黙阿弥によって整えられ、1903年に上演されました。かつて「鶴岡石段の場」や「鬼王貧家の場」など、関連人物を中心にした幕も存在しましたが、現在はその上演頻度は非常に少なくなっています。

あらすじ

物語は、源頼朝の重臣である工藤祐経が富士の巻狩りの総奉行に任命されるところから始まります。工藤の屋敷には、多くの大名や遊女が祝福に訪れます。そこに登場するのが、かつて工藤の手によって討たれた河津三郎の息子、曽我十郎とその弟、五郎の兄弟です。二人は父の仇に対する思いを抱きつつ、朝比奈三郎に出会い、工藤と再会の約束を交わします。この再会は、兄弟の復讐への道を進むための重要なステップとなります。

演出の多様性

「寿曽我対面」は、その豊かな演出が特徴です。江戸時代には毎年異なる演出が行われ、戸板康二は様々な型を挙げています。近年では、朝比奈役を女性が演じることもあります。また、大阪では特別な演出が行われ、三代目尾上多見蔵が源頼朝の役として出演したこともありました。

関東と関西では演出に違いがあり、例えば工藤が兄弟の父を語る際に、背面にある襖を開けて富士山を見せるのは関西特有のやり方です。

役の特色

この作品には、工藤、曽我兄弟、朝比奈、遊女など、多彩な役どころが揃い、視覚的にも音楽的にも非常に魅力的です。その中でも、五郎は荒事の代表的な役として知られ、彼の動きや演技は特に注目されています。

幕切れと縁起物

作品の幕切れには、各キャラクターがそれぞれの見得を決めます。工藤が立つ際の「鶴の見得」や、曽我兄弟の「富士山の見得」など、各役者が縁起物のポーズを取ります。

まとめ

「寿曽我対面」は、歌舞伎の中でも特に人気のある作品であり、曽我兄弟の誇り高い復讐劇を通じて、日本の伝統芸能の豊かさを体現しています。その演出の多様性や役柄の魅力から長年にわたり愛され続けている名作と言えるでしょう。

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