専守防衛

専守防衛（せんしゅぼうえい）

専守防衛とは、日本における戦後の防衛戦略の基盤を成す考え方であり、主に他国から武力攻撃を受けた際にのみ防衛力を行使する姿勢を指します。この概念は、1954年に自衛隊と防衛庁が設立されたことを契機に公式に用いられるようになりましたが、戦前からその言葉自体は存在していました。

歴史的背景

専守防衛の概念が初めて国会で言及されたのは、1954年のことで、当時の防衛庁長官であった杉原荒太がこの用語を使用しました。その後、1970年には中曽根康弘が防衛庁長官であった際に、「防衛白書」で正式に記載され、法律や国会の議論の中でもその定義が重要視されました。

特に1981年には、防衛白書において「専守防衛」が明確に定義され、自衛のための行動は相手の攻撃を受けた時に限り、その態様は必要最小限にとどめるべきだとされました。このように、専守防衛は憲法の精神に沿った受動的な防衛戦略として位置づけられています。

日本の防衛政策

日本の防衛は、日米安全保障条約に基づいており、自衛隊とアメリカ軍による協力体制が確立されています。この枠組みの中で、先制攻撃や敵基地攻撃能力、集団的自衛権、さらには自衛隊の海外派遣といった問題が熱心に議論されていますが、これらの議論はしばしば専守防衛という基本方針の形骸化を招いていると批判されることがあります。

他国の防衛スタンス

一般的には、敵の侵攻に対して自国領域での軍事力を行使することは、多くの損害を生むため、できるだけ自国領域の外で対処する方が望ましいとされています。これに関連して、ドイツの例からも興味深い事例が見られます。

ドイツは第二次大戦後、ナチス体制の再発を防ぐため、軍の運用を専守防衛に制限し、文民統制を重視しました。1990年代には、カンボジア、ソマリア、そしてユーゴスラビアへの派兵が行われ、海外派兵の法的な根拠も整備されていきましたが、国民の多くはこの派兵が平和な任務であると考えていました。しかし、現地での死傷者の増加に伴い、派兵の正当性が論争の的となりました。

最近では、ドイツ連邦軍が戦闘活動にまで参加する機会が増え、専守防衛の原則が薄れてきているとの指摘もあります。国防省では、徴兵制の廃止後、志願兵制度への移行が進められていますが、これに対する懸念も根強く、最近の海外派兵や戦争への関与が批判されることが多くなっています。

結論

専守防衛は、日本の独自の防衛思想として根付いていますが、時代とともに多くの国際的な影響を受けて変化しつつあります。日本やドイツにおける専守防衛の考え方は、国際情勢の変化とともに見直される可能性が高く、今後の防衛政策には多くの注目が集まっています。

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