専当一身一流

専当一身一流について

専当一身一流（せんとういっしんいちりゅう）は、17世紀から18世紀に活躍した武士、専當則安（1697-1763）によって創設された柔術の流派である。この流派は、専當一心流とも呼ばれ、柔術だけでなく杖術に関する教えも含まれている。特に、長州藩の藩校であった明倫館において、その技術が伝承され、広がりを見せてきた。

歴史の背景

流祖である専當則安はかつて武州の神谷勘解由として知られ、長年に渡って柔術の修行に励んだ。彼は多種多様な流派の奥義を学び、習得する中で、柔術を志す者たちが直面する課題に注意を向けた。特に体力に恵まれていない者や根気強くない者たちが上達できず、挫折する事例が多かったことが、彼の考え方に影響を与えた。これを踏まえ、神谷は「當り捕」という技術を特に重視し、専当一身一流を設立した。彼は後に改名し、専當則安として名を馳せることになる。

明倫館における発展

専当一身一流は、主に長州藩の明倫館において教授され、多くの武士たちに受け継がれてきた。著名な柔術家である藤田七郎右衛門信安は、明倫館で免許皆伝を得て柔術の先生として活躍した。信安の孫である藤田幾之進信勝も新明倫館で柔術の指導に携わり、同時代の吉田松陰らと共に武道の発展に寄与した。

象水舎とその影響

明治時代、萩市の瓦町には「象水舎」と呼ばれる柔術道場が設立された。ここでは山県信蔵が教鞭を執り、1873年には旧萩藩士から免許を受けた。彼は柔術だけでなく、倫理や漢文の授業も教えていたため、武道の教育にも貢献していた。信蔵は1876年に萩の乱に関与したことで懲役十年の判決を受けたが、その後も教学を続け、道場は多くの武士に影響を与えた。

文献と技術の体系

専当一身一流では、躰術、杖術、捕縄術などの技術が伝えられ、特に48箇条の形が重要視されている。この流派の特徴として、他の流派では多く見られる詰手（固め技）が少なく、「當り捕」の理念を重視している点が挙げられる。詰めずに敵を制することから、理論的に戦うのではなく、実際の技術を重視する傾向が強いとされている。

流名の由来と系譜

流派名の「専當」は、當り捕の技術に特化していることを意味し、「一身」は敵に対する構えを表す。また、「一流」は当り捕の技術を極め、他の流派との混ざりを持たない姿勢を表現している。流派の系譜は、専當則安から始まり、藤田信安、藤田幾之進信勝など多くの師匠たちに継承され、現在まで続いている。数々の流派や教師たちの活動を通じて、武道としての深い歴史と伝統を築いてきた。

まとめ

専当一身一流は、その技術や理念が今日でも多くの武士や武道家に受け継がれ、長州藩だけでなく日本全国に影響を与えている流派である。武道の技術を学び、精神を磨くことが、現代でも多くの人々にとって重要であることは間違いない。

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