捕縄術

捕縄術（ほじょうじゅつ）

捕縄術は日本の伝統武術の中でも特異な技術であり、縄を使用して敵を捕らえることを目的としています。この武術は、敵を緊縛し、従わせる技術であり、さまざまな流派や技法が存在しています。

歴史的背景

捕縄術の起源は江戸時代にさかのぼります。当時、捕手術として広く用いられており、各地で多くの流派が誕生しました。それぞれの流派が独自の技法や理論を持ち、捕縄術は日本の武術の中でも重要な地位を占めていました。明治維新後も、警察機関でこの技術が教えられていたものの、昭和時代に手錠が普及したことにより、その必要性が薄れました。現在では捕縄術を専門に継承する流派は少なく、ほとんどが失伝しています。ただし、柔術や杖術の流派の中で部分的に伝承されていることもあります。

また、「お縄」と呼ばれる逮捕の言葉は、この捕縄術から派生したものであると言われています。縄による拘束の技術は、現代の逮捕術の基礎を形作るものとして、重要な位置付けを持っています。

技法の分類

捕縄術は、技法によっていくつかのカテゴリーに分けられます。

1. 早縄: 敵をすばやく拘束する技術で、手早い対応が要求されます。相手を制圧した後に縄を使うことが特徴です。
2. 本縄: 主に犯罪者の護送や謁見時に使用され、特定のルールに基づいた縛り方が存在します。
3. 拷問縄: 緊縛された状態から拷問を加えるために用いられる技術で、より高度な技が要求されます。
4. 縄抜け: 縄を使った拘束から脱出する技術で、柔軟な思考と技術が必要です。
5. 破縄術: 縄を破って脱出するための技術として、特別な技が用意されています。

捕縄術で使用される縄は、流派や用途によってその太さ、長さ、材質が大きく異なることが特徴であり、江戸町奉行所では季節ごとに縄の色を変えることがあったといいます。これにより、実用性と共に美しさも兼ね備えた技術としての側面を持っていました。

主な流派

捕縄術には、江戸時代に150以上の流派が存在し、その後もさまざまな技が展開されました。以下に一部の流派を紹介します。

• - 荒木流
• - 一達流
• - 一角流
• - 制剛流
• - 佛体流
• - 梶原流
• - 猪谷流
• - 方圓流
• - 武衛流
• - 竹内流
• - 天下無双眼心流
• - 本覚無雙流
• - 夢想賢心流
• - 日域無雙一覺流
• - 黒川流小具足廻

この他にも多くの流派が存在しており、それぞれが独特の技法や理念を持っています。近年、捕縄術に関する研究や普及活動がいくつか見られ、過去の技術を再評価する動きもみられます。

参考文献

• - 水越ひろ著『写真で覚える捕縄術-手にとるようにわかる完成手順』愛隆堂
• - 藤田西湖著『図解捕縄術-藤田西湖著作集4』名著刊行会
• - 名和弓雄著『十手・捕縄事典-江戸町奉行所の装備と逮捕術』雄山閣

このように、捕縄術は日本の武術の中でも特に興味深い分野であり、その歴史や技法の深い知識は、武道を学ぶ者にとって尊い資源となることでしょう。

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