専教寺

広島県呉市音戸町に位置する専教寺は、浄土真宗本願寺派に属する由緒ある寺院です。現在の住職は第十七世の吉川紹淳氏が務めています。

この寺院が開かれた背景には、戦国時代の歴史が深く関わっています。開基である長圓は、毛利元就によって滅ぼされた藤姓吉川氏最後の当主、吉川興経の子と伝えられています。長圓の幼名は仙寿丸といい、父は吉川興経、母は宮庄下野守の娘であったとされています。病を得て円光寺で出家し、仏道に進んだ仙寿丸は、天文二年（1533年）に専教寺を開きました。そして、元亀元年（1570年）に至るまで住職を務め、専教寺の礎を築きました。藤姓吉川氏の歴史は終わりを告げましたが、その血筋を引く人物がこの地に寺を開き、人々の心の拠り所となったのです。

専教寺は長圓が開いて以来、長い歳月を経て歴代の住職に引き継がれてきました。

第二世の道喜は、慶長三年（1598年）までの二十年間、寺を守りました。続く第三世の起圓は、寛永二十年（1643年）まで実に四十六年間という長きにわたり住職を務め、寺の安定に大きく貢献しました。

第四世の玄立は、正保二年（1645年）から寛文十二年（1672年）まで二十八年間。第五世の閑立は、延宝元年（1673年）から享保六年（1721年）まで、五十年に迫る四十九年間もの長い間、専教寺の法灯を守り続けました。

第六世の峯雪は、享保六年（1721年）から享保十六年（1731年）までの十一年間。第七世の梅觀は、享保十六年（1731年）から寛保二年（1742年）までの十二年間を務めました。梅觀の代である元文五年（1740年）には、本堂の再興が行われ、伽藍の維持に努められました。

第八世の健淳は、寛保二年（1742年）から二十五年間住職を務めました。第九世の智洞は、明和六年（1769年）から再び四十六年間という長期間にわたり、専教寺の発展に尽力しました。

第十世の建幢は文化十一年（1814年）から七年間。第十一世の民浄は文政四年（1821年）から二十一年間。第十二世の僧聲は、天保十二年（1841年）から住職となり、万延元年（1860年）に亡くなりました。

第十三世の最勝は文久元年（1861年）から。第十四世の泥洹は明治二十七年（1894年）からそれぞれ住職を務めました。明治時代に入り、社会が大きく変化する中で、寺院も新たな時代に対応しながら法義を伝えていきました。

第十五世の法粹は、大正五年（1916年）に得度されました。法粹には三人の息子がおり、長男の暢明氏が第十六世住職を継ぎ、次男の浩明氏は西福寺へ、三男の浩慈氏は江田島市大柿町の妙覚寺へ入寺しました。法粹の坊守は、高林坊より迎えられたと伝えられています。

第十六世の暢明氏は、父である法粹の跡を継ぎ、専教寺にとって重要な事業である本堂の再建を果たしました。これにより、寺院の基盤がさらに強固なものとなりました。

そして、現在の住職である第十七世の紹淳氏は、第十六世暢明氏の長男にあたります。紹淳氏は、本堂の外陣の修復を行い、さらに客殿を建立するなど、現在の専教寺の伽藍整備に尽力しています。代々受け継がれてきた専教寺の歴史と教えは、現在の住職によって守られ、地域の人々に伝えられています。

専教寺の由緒や歴史に関する詳細は、寺院に所蔵されている『専教寺由緒記』に記されています。

もう一度検索