射爆理論

射爆理論（Firing & Bombing Theory）

射爆理論は、射撃および爆撃における目標の撃破を、確率論的な特性に基づいて解析し、効率を最大化するための最適条件を追求する理論です。この理論は、射撃と爆撃をシステムとして捉え、目標撃破の確率特性の分析と、効率化・最適化の理論研究という2つの主要な分野に分けられます。

概要

銃砲を用いた戦闘における銃砲弾の弾着と目標破壊は、ランダムな要素を含む確率的な現象であり、射手を含む発射システムの特性に影響されます。射爆理論は、この確率とシステム特性に着目し、火力投射兵器の射撃と爆撃において、目標撃破の確率特性を分析し、目標撃破の効率化と最適化を目指します。

目標撃破の確率論的特性分析は、軍事オペレーションズ・リサーチ（OR）の問題として扱われ、射撃と爆撃のシステム全体を確率的変動要因に分解し、各要因の確率分布を分析します。一方、目標撃破の効率化と最適化の理論研究は、資源配分問題として扱われ、射法、修正方法、射弾配分、兵力配分などの最適化が研究されます。

用語と定義

射爆理論では、分析と効果の最適化を図るため、使用する用語を厳密に定義し、曖昧さを排除しています。

撃破と命中

目標の撃破は、単なる損傷ではなく、目標の機能喪失を意味します。例えば、艦船の撃破は、沈没、航行不能、主要兵器の使用不能など、戦闘能力を失わせる状態を指します。一方、射弾の命中とは、目標中心から規定範囲内に弾着することを意味し、必ずしも目標の破壊に繋がりません。

小目標と大目標

小目標（点目標）は、1発の弾の効果で撃破される目標であり、部分的な被害は考慮されません。大目標（面目標）は、複数発の命中弾の累積効果で撃破される目標です。面状に散らばった多数の小目標の集団は、集合的大目標として扱われます。

逐次射撃と同時射撃

逐次射撃は、前回射撃の結果を観測し、次からの射撃に反映させる方法です。同時射撃は、前回の射撃を変更せずに次の射撃を行う方法です。これらは時間的な差異ではなく、結果を次回の判断に反映させるか否かの違いです。

観測射撃と修正射撃

観測射撃は、目標撃破の有無だけを次回の射撃に反映させる方法です。修正射撃は、弾着点の観測結果によって次の射撃を修正する方法です。修正射撃には、遠近・左右のずれを修正する挟叉修正射撃と、ずれの距離まで考慮する偏差修正射撃があります。

独立射撃、サルボ射撃、パターン射撃

独立射撃は、1発の射撃の度に照準をやり直す方法です。サルボ射撃（斉射）は、同一の射撃諸元のままで複数発の射撃を行う方法です。パターン射撃は、一定のパターンで散開した弾着点を描くように企図する方法です。

単発撃破確率と撃破速度

単発撃破確率（SSKP）は、1発の射撃・爆撃によって小目標を撃破する確率を表します。撃破速度は、単位時間当たりの平均発射弾数に単発撃破確率を乗じた値です。大目標の撃破では、目標撃破確率と期待カバレッジが評価基準となります。

目標撃破確率を支配する要因

目標撃破の確率論的特性は、以下の要因によって支配されます。

目標: 目標位置の不確実性、目標の移動
発射装置・弾薬: 銃砲弾の発射機構・爆弾投下システム・弾薬・薬剤の精度誤差
射撃管制: 照準装置・射撃管制装置の精度誤差、操作員の過誤
環境: 自然環境による弾道のずれ、発射基台の動揺

弾着点の分布

射撃と爆撃における弾着は、武器誤差、照準誤差、弾道誤差の3つの要素によってランダムに分布します。これらの誤差は正規分布に従うと仮定され、弾着点のずれは正規分布で近似されます。

単発撃破確率

単発撃破確率（SSKP）は、損傷関数と弾着分布から導かれる、1発の射爆による目標撃破確率であり、特定目標に対する兵器の有効性を示す指標となります。

逐次修正射撃

逐次修正射撃には、挟叉修正射撃と偏差修正射撃の2種類があります。挟叉修正射撃では、弾着が目標に対して遠いか近いかの情報のみが得られ、偏差修正射撃では、目標中心と弾着点のずれの距離情報（ミス・ディスタンス）が得られます。

近迫距離と負傷公算

射爆撃においては、着弾点に近ければ近いほど被害を受ける公算が高まります。射爆撃目標に味方地上部隊が近接している場合、これは特に重要な特性となります。

参考文献

飯田耕司『軍事OR入門』三恵社、2008年
飯田耕司『戦闘の科学 軍事ORの理論』三恵社、2005年

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