尊攘堂

尊攘堂は、幕末の尊王攘夷運動において倒れた志士たちを祀り、その遺品や資料を保存するために建てられた堂です。現在は京都大学の構内に位置しています。

創建の背景

吉田松陰は、生前、京都に尊攘堂を建立し、勤王の志士たちの霊を慰め、人々の愛国心を鼓舞しようという構想を持っていました。しかし、志半ばで安政6年（1859年）に刑死。その遺志は、門弟の入江九一に託されました。しかし、入江もまた元治元年（1864年）の禁門の変で命を落とし、松陰の悲願は実現を見ることはありませんでした。

品川弥二郎による再興

松陰の意思は忘れ去られることなく、門弟の一人であった品川弥二郎によって受け継がれます。品川は、明治20年（1887年）にドイツからの帰国後、京都の高倉通錦小路に尊攘堂を建設。勤王の志士たちの霊を祀り、殉難に関する資料、遺墨、遺品などを収集・保存しました。一般の参拝や収蔵品の観覧も許可され、多くの人々が尊攘堂を訪れました。

品川は、尊攘堂を私有化することを良しとせず、京都在住の有志に保存を委ねました。しかし、明治33年（1900年）に品川が亡くなると、松陰が京都に大学を創設しようとしていたという遺志に基づき、尊攘堂とその収蔵品は京都帝国大学（現在の京都大学）に寄贈されることになりました。1903年には、大学構内（現在の吉田キャンパス）に新たに尊攘堂が建設されました。

京都大学への寄贈後

京都帝国大学では、尊攘堂のために春秋の年2回祭典が執り行われ、後に毎年秋に小祭、3年ごとに大祭を行うようになりました。収蔵品は大学附属図書館が管理し、希望者には随時観覧が許可されました。

その後、尊攘堂の収蔵資料は大学附属図書館に移管され、「維新特別資料」として保管されることになりました。建物自体は何度か移転し、1989年以降は京都大学埋蔵文化財研究センターの資料室として、大学構内における埋蔵文化財調査の成果を保存・展示するために活用されています。1998年には、国の登録有形文化財に登録されました。

尊攘堂は、幕末の志士たちの精神を今に伝える貴重な文化遺産として、その歴史を静かに刻み続けています。

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