尋常中学校ストライキ事件

尋常中学校ストライキ事件

尋常中学校ストライキ事件（じんじょうちゅうがっこうストライキじけん）は、1895年10月から翌年の3月までの期間、沖縄県尋常中学校（現在の沖縄県立首里高等学校）の生徒たちが、校長の辞任と教育制度の改革を求めて行ったストライキです。この事件は「一中ストライキ事件」とも呼ばれています。

事件の背景

このストライキのきっかけは、1894年に本土から赴任してきた児玉喜八校長の発言に遡ります。彼は全校生徒への訓話で「皆さんは普通語さえ完全に使えないくせに、英語まで学ばなければならない」と述べ、英語の授業を廃止しようとしました。この発言が、学ぶことが制限されていると感じていた生徒たちに対する差別的な意識を示すものであったため、大きな反発を招きました。この時点では、生徒の信頼を寄せられていた下国教頭の説得もあり、英語は選択科目として残すことができました。

しかし、事件が進行する中で児玉校長が下国教頭を休職させ、沖縄文化に理解のあった田島利三郎教諭を解雇したことが決定的なきっかけとなり、急激に生徒たちの怒りが膨れ上がりました。彼らは校長の退任を求め、6ヶ月にも及ぶストライキを開始しました。

ストライキの展開

当時、尋常中学生であった伊波普猷らは、退学届を次々に提出し、学校と県庁に強い圧力をかける戦略を立てました。また、下級生も巻き込んで全校生徒の団結を図りました。この活動の影響で、ほとんどの生徒が同調し、11月12日から実質的なストライキを開始しました。

生徒代表たちは堂々と児玉校長に辞職勧告を行ったものの、校長は彼ら5人を首謀者として退学処分にするという強硬策に出ました。これは火に油を注ぐ事態となり、生徒たちはより一層の抵抗を決意しました。彼らは新聞を通じて主張を公にし、文部大臣にも建白書を提出しました。また様々な学校で尋常中学校への入学を控えるよう呼びかける遊説も行ったのです。

児玉校長の解任

生徒たちの運動は広く支持を受け、ついに1896年に児玉校長は解任されました。このストライキは中学生たちの勝利に至りましたが、運動の指導者であった漢那憲和や伊波普猷などの復学は認められませんでした。

結果とその後

ストライキの結果、退学処分を受けた生徒たちは異なる道を歩むことになりました。伊波普猷は1897年に上京し、三度の浪人を経て第三高等学校に合格、そして東京帝国大学に進学しました。幼少期から海軍を志していた漢那憲和は、退学後に海軍兵学校に入学し、最終的には海軍少将まで昇進し、政治家としても活動しました。

同様に、照屋宏も上京して第一高等学校に合格し、工学部で学び、後に那覇市長を務めるなどの実績を残しました。金城紀光は復学し医師になり、真境名安興はジャーナリストとして活躍しました。屋比久孟昌は士官候補生から初の将校となりましたが、悲劇的な最期を迎えました。

このストライキ事件は、沖縄における教育に対する生徒の強い意志を示す重要な出来事として歴史に刻まれています。

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