小さな恋のメロディ

1971年、世界を魅了した純愛物語『小さな恋のメロディ』

1971年公開のイギリス映画『小さな恋のメロディ』（原題：Melody）は、後にハリウッドで成功を収めるアラン・パーカーが脚本を手掛けたロマンティック・コメディです。11歳の少年ダニエルと少女メロディの、瑞々しくも切ない恋物語を描いた本作は、イギリスやアメリカでは商業的な成功を収めませんでしたが、日本やアルゼンチン、チリなどのラテンアメリカ諸国で、予想をはるかに超える大ヒットとなりました。

タイトル変更と公開の波乱

当初は『Melody』として製作されましたが、恋愛要素が不十分と判断され、『S.W.A.L.K.』（Sealed with A Loving Kiss）に変更されました。これはイギリスの子供たちの間で使われていた、「愛情のキスで封印された告白」を意味する表現です。しかし、アメリカでの普及を考慮して、最終的に『Melody』に戻され公開されました。このタイトル変更劇は、本作の公開における最初の波乱の兆候でした。

スタッフと制作の舞台裏

監督はワリス・フセイン、製作はデヴィッド・パットナム、撮影はピーター・サシツキーが務めました。音楽はビー・ジーズ、クロスビー、スティルス＆ナッシュ、リチャード・ヒューソンらが担当し、特にビー・ジーズの楽曲は作品全体の雰囲気を彩っています。脚本家であるアラン・パーカーは、本作が初脚本でありながら、第2班監督も兼任し、休憩時間や運動会のシーンなどを自ら撮影しました。また、撮影当時17歳だったジャック・ワイルドや、ラストシーンの代役を務めた少年コーネリアスなど、多くの若手俳優が参加しています。ラストシーンのトロッコ走行シーンは、トロッコの重さから、スタッフの助力が必要だったというエピソードも残っています。主なロケ地はロンドンのハマースミスとランベス界隈、レコーディングはトゥイッケナム撮影所で行われました。

ストーリー：子供たちの独立宣言

舞台はロンドンの公立学校。厳しい教師や過干渉な親たちと、自由を求める子供たちの間には微妙な対立がありました。内向的なダニエルは、メロディと出会い、恋に落ちます。2人の純粋な恋は、海水浴デートでの騒動や、ダニエルの悪友オーンショーとのトラブルへと発展します。大人たちに理解されず、結婚を望む2人は、クラスメートを巻き込んだ集団脱走という行動に出ます。廃線跡で挙式しようとした2人は教師に見つかり逃げ惑いますが、発明好きな少年が作った爆弾によって教師たちを混乱に陥れ、無事に脱出。トロッコに乗って、どこまでも続く野原へと走り去る2人の姿は、大人社会からの自立を象徴しています。

作品解説：階級格差と反骨精神

『小さな恋のメロディ』は、単なる恋愛映画にとどまらず、「大人社会からの独立戦争」という側面を持っています。中産階級のダニエルと労働階級のメロディ、そして労働者階級出身と思われるオーンショーの友情は、イギリスの階級格差という社会構造を背景に描かれています。ラストシーンのトロッコは、1970年代の反体制的なムード、「30歳以上は信用するな」という風潮を反映しているとも解釈できます。

公開とその後：日本での大ヒットと継続的な人気

アメリカでの公開はイギリスに先立ちましたが、ヒットには至らず、イギリスでも酷評されました。しかし、日本ヘラルドによって輸入された日本では、大ヒットを記録しました。南米諸国でも人気を博し、特に日本での人気は根強く、サウンドトラック盤は現在も生産され続けています。1970年代から2020年代にかけて、何度もリバイバル上映が行われ、2022年には公開50周年イベントも開催され、主演俳優の来日が実現するなど、その人気は衰えることを知りません。

文化への影響

『小さな恋のメロディ』は、日本の音楽やアニメ、ドラマなど、様々な文化作品にも大きな影響を与えました。ザ・リリーズ、BLANKEY JET CITY、筋肉少女帯、斉藤和義など、多くのアーティストが本作をモチーフにした楽曲を発表しています。サンリオのキャラクター「ディアダニエル」や、タツノコプロのアニメ作品『けろっこデメタン』なども、本作からの影響が見られます。

まとめ

『小さな恋のメロディ』は、商業的な成功だけでなく、多くの人の心に深く刻まれた作品です。少年少女の純粋な恋物語、反骨精神、そして時代背景を反映した独特の世界観は、現在でも多くの人々を魅了し続けています。その人気は、映画単体を超え、日本文化の一部として根強く息づいていると言えるでしょう。

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