小オクタウィア

オクタウィア

紀元前69年から紀元前11年まで生きたオクタウィアは、初代ローマ皇帝アウグストゥス（オクタウィアヌス）の同母姉にあたります。同名の異母姉（大オクタウィア）と区別するため、一般に「小オクタウィア」と呼ばれています。彼女は生前より、また後世においても、ローマ女性が尊ぶべき美徳の象徴として高く評価されています。

彼女は現在のイタリア領ノーラで誕生しました。父はガイウス・オクタウィウス、母はガイウス・ユリウス・カエサルの姪にあたるアティア・バルバ・カエソニアです。紀元前59年に父を失った後、母はルキウス・マルキウス・フィリップスと再婚しました。この幼少期から青年期にかけて、彼女は両親と共に各地を転々とする生活を送ることが多かったようです。

最初の結婚

紀元前54年、彼女はガイウス・クラウディウス・マルケッルス・ミノル（小マルケッルス）と結婚しました。夫は当時、彼女の大叔父であるユリウス・カエサルとは敵対関係にありました。カエサルは娘ユリアがポンペイウスとの間に子を残さずに亡くなった後、ポンペイウスと血縁関係を結ぶために、マルケッルスとオクタウィアを離婚させ、オクタウィアをポンペイウスと結婚させようと懇願したことがありました。しかし、ポンペイウスがこの提案を断ったため、この婚姻は実現しませんでした。その後も夫マルケッルスはカエサルに対し対立的な姿勢を維持していましたが、ファルサルスの戦いの後、カエサルに恭順しました。オクタウィアはこの時期もマルケッルスの妻であったと考えられています。この結婚から、息子マルケッルスと二人の娘、大マルケッラ、小マルケッラが誕生しました。夫マルケッルスは紀元前40年に亡くなりました。夫のマルケッルスはカエサルの政敵でありましたが、オクタウィアの子供たちは後にユリウス＝クラウディウス朝の皇族の一員となる道を歩むことになります。

2度目の結婚

最初の夫に先立たれてからわずか数ヶ月後、オクタウィアはマルクス・アントニウスと再婚します。アントニウスにとってはこれが4度目の結婚であり、オクタウィアにとっては2度目でした。この結婚は、当時緊張関係にあった弟オクタウィアヌスとアントニウスの間の政治的な和解を目的とした政略結婚としての側面が強いものでした。しかし、このような経緯にもかかわらず、オクタウィアはアントニウスに対し常に忠実な妻であり続けました。紀元前40年から紀元前36年頃まで、彼女は夫と共にアテナイで生活しました。そこで、先夫の子らを熱心に育てつつ、アントニウスとの間に二人の娘、大アントニアと小アントニアをもうけました。

アントニウスとの離別とその後

その後、アントニウスはオクタウィアヌスとの間の協定に基づき、ローマ世界の東方を支配領域としてエジプトへ赴きました。そこで彼はクレオパトラ7世と出会い、二人の間に恋愛関係が生まれると、ローマに残され夫の不在を守っていたオクタウィアとの関係は急速に冷え込んでいきました。紀元前35年、パルティア遠征に失敗したアントニウスの要請を受けて、オクタウィアが編成した軍団を派遣した直後に、アントニウスは一方的に彼女との離縁を通告しました。この出来事は、弟オクタウィアヌスや当時のローマ市民の間に激しい怒りを巻き起こし、以前から多くの確執があった弟と夫の間の決定的な対立を引き起こすこととなりました。最終的に、アントニウスはアクティウムの海戦での敗北の後、自らの命を絶ちました。

アントニウスの死後、オクタウィアは騒乱から離れ、静かな生活を送りました。彼女は自身の子供たち、すなわちマルケッルス、大マルケッラ、小マルケッラ、大アントニア、小アントニアを育てただけでなく、アントニウスがクレオパトラらとの間に残した孤児たち、ユッルス・アントニウス、アレクサンドロス・ヘリオス、クレオパトラ・セレネ、プトレマイオス・フィラデルフォスをも引き取って手厚く養育しました。弟であるアウグストゥスは、彼女の息子マルケッルスを自身の後継者と定めますが、マルケッルスは紀元前23年に若くして病死してしまいます。息子を失ったオクタウィアの悲しみは非常に深く、計り知れないものだったと伝えられています。彼女は紀元前11年に、姪にあたるアウグストゥスの娘ユリアが、後の皇帝ティベリウスと結婚するのを見届けた後に亡くなりました。彼女の葬儀は国葬として丁重に行われました。オクタウィアは、古代ローマにおいて、その横顔の肖像がコインに刻まれて発行された最初の女性としても歴史に名を残しています。

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