小久慈焼

小久慈焼の歴史と特徴

小久慈焼（こくじやき）は、岩手県久慈市で作られる陶器の一つで、その歴史は1813年（文化10年）にさかのぼります。この年、陶工の嘉蔵が相馬の地から訪れ、小久慈天田内の甚六に助けられ、三日町で自らの窯を築いたことがその起源とされています。この出来事は、小久慈焼が生まれる礎となりました。

まもなくして、甚六の子である熊谷甚右衛門が嘉蔵に教えを受け、陶器作りを始めます。彼は師匠から得た技術を活かし、地元で採れる粘土や独自の釉薬を駆使して茶器などを製作しました。その後、彼の技法は熊谷家に引き継がれ、代々受け継がれていきました。

明治時代には著名な民藝運動家である柳宗悦により、その作品が高く評価されました。このように、小久慈焼は創業以来、現在にいたるまで一つの窯で生産され続けており、江戸時代以前からの窯元としては日本最北の存在となっています。1960年代には、地元の産業を育成することを期待して下嶽毅や四役松男らによって新たに窯が築かれ、その伝統を守りながら現在も生産が続けられています。2019年時点では、8代目がその技を受け継いでいます。

しかし、小久慈焼に関する誤解もあります。一部では久慈が八戸藩の御用窯として扱われていたとの記録がありますが、実際には八戸藩にそのような窯があった証拠は存在せず、盛岡藩もまた小久慈に特別な御用窯を持っていたという記録はありません。

小久慈焼の独自の特徴

小久慈焼の魅力は、その独特の作風と地元の素材を生かした技術にあります。特に地元から取れる粘土を基にした作品は、わら灰を利用した温かみのある白釉や、砂鉄を使用したアメ紬のような釉薬を取り入れています。また、注ぎ口が長い片口は小久慈焼の代表的な作品として知られています。さらに、食器や日用雑器も制作しており、糠白釉、飴釉、掛分釉などを用いた素朴な風合いが特徴です。

久慈で採れる粘土は鉄分が少ないため、焼き上がりの白色が非常に美しく出ることが多いです。このような特色により、小久慈焼は「暮らしの器」として地元の人々に親しまれ、各家庭に一つは置かれているほどです。

最近では、JR東日本の観光列車「TOHOKU EMOTION」や「TRAIN SUITE 四季島」の飲食用の器としても小久慈焼が選ばれるようになり、その品位と人気はさらに高まっています。そのため、伝統を守りつつ現代のニーズにも応える小久慈焼は、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。

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