小倉磐夫

日本の光学技術を牽引した巨人：小倉磐夫博士の生涯

小倉磐夫博士（1930年10月17日-2000年10月6日）は、日本の応用光学分野における世界的権威として知られる工学者です。東京大学名誉教授を務め、カメラ、レンズ、ブラウン管、レーザーといった幅広い分野で画期的な研究開発を行い、日本の光学技術の進歩に多大な貢献を果たしました。その功績は、数々の著書や論文、そして後進の育成にも見ることができます。

東京大学から世界へ羽ばたく

1930年、東京に生まれた小倉博士は、東京大学理学部物理学科を卒業後、アサヒカメラのテクニカルイラストレーターとしてキャリアをスタートさせます。その後、理学博士号を取得し、日立製作所中央研究所を経て、東京大学生産技術研究所へと移ります。この間、米国パーキンエルマー社での客員研究員としての経験も積んでおり、国際的な視野を養いました。

赤色レーザー発振、日本の光学技術を先導

1963年には、日本で初めて赤色気体（He-Ne）レーザーの発振に成功。この成果は、レーザー技術の産業応用において大きな一歩となりました。また、長年にわたりアサヒカメラ誌「ニューフェース診断室」の担当ドクターとして執筆活動を行い、一般向けに分かりやすく光学技術を解説することで、科学技術への理解促進にも貢献しました。

教育者としての貢献と晩年

東京大学では講師、助教授を経て教授に就任。多くの学生を育成し、日本の光学技術分野を担う人材育成に尽力しました。1990年には千葉大学工学部画像工学科教授を兼任し、その後、東京大学を定年退職後も千葉大学で教鞭をとり続けました。カリフォルニア大学アーバイン校客員教授としての経験も持ち、国際的な研究交流にも積極的に取り組んでいました。

小倉博士の研究活動は、単なる技術開発にとどまりません。「カメラの性能と評価」といった写真工業関連の書籍執筆や、数々の著書を通して、光学技術の社会への応用と普及に尽力しました。特に『国産カメラ開発物語』や『カメラと戦争』といった著作は、日本のカメラ産業の歴史と技術開発の過程を克明に描き出し、高く評価されています。

カメラ技術への貢献

小倉博士は、カメラやレンズの研究開発に深く関わり、その専門知識を活かしたエッセイも多数執筆しました。単なる技術者としてだけでなく、カメラ文化への貢献も高く評価されています。

2000年、食道癌により逝去。叙正四位、叙勲三等旭日中綬章を受章しました。小倉磐夫博士の功績は、日本の光学技術、ひいては産業の発展に大きな影響を与え、現在もなおその影響は色濃く残っています。その生涯は、研究者、教育者、そして啓蒙家としての多様な側面を持つ、真の科学者像を示すものです。

主要著書

『国産カメラ開発物語 - カメラ大国を築いた技術者たち』（朝日新聞社）
『カメラと戦争 - 光学技術者たちの挑戦』（朝日新聞社）
『新装版 現代のカメラとレンズ技術』（写真工業出版社）
『Illustrated laser surgery』（持田製薬）

小倉博士の研究と教育への情熱は、日本の光学技術の未来を照らし続ける灯火となるでしょう。

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