小和沢橋

小和沢橋

概要

岐阜県可児郡御嵩町と加茂郡八百津町の間を流れる木曽川に架かる小和沢橋（こわざわばし）は、岐阜県道358号井尻八百津線の一部を構成する吊橋です。この橋は、下流に位置する丸山ダムから約300mの地点に架設されています。全長80.0m、幅員3.5mという規模を持ち、1952年（昭和27年）に供用が開始されました。具体的な架設区間は、可児郡御嵩町小和沢地先と加茂郡八百津町八百津地先を結んでいます。

歴史と役割の変遷

小和沢橋の架設は、丸山ダムの建設事業と密接に関わっています。当初、この橋はダム建設のための資材運搬などに使用される工事用道路の一部として建設された吊橋でした。ダム完成後も県道として供用され続けましたが、時の経過とともに老朽化が進み、1979年（昭和54年）には大規模な補修工事が実施されています。

この橋には、構造上の制約から重量制限が設けられており、通行可能な車両は総重量6.0tまでに制限されています。これは、現代の大型車両、特に土木工事などに用いられる重量のある車両にとっては大きな障壁となる値です。

その後、丸山ダムの再開発事業として新丸山ダムの建設が計画されると、再び重量のある工事車両の通行が課題となりました。既存の小和沢橋では、その重量制限ゆえに、新たなダム建設に必要な大型車両の通行を受け入れることができなかったのです。

この問題を解消するため、小和沢橋に近接する下流側に、新丸山ダムの工事車両専用となる新たな橋が建設されることになりました。この橋は2005年（平成17年）に完成し、「のぞみ橋」と名付けられました。のぞみ橋が完成したことで、新丸山ダムの工事車両を含むすべての車両は、重量制限のないのぞみ橋を迂回して通行するようになったのです。

これにより、小和沢橋の役割は大きく変化しました。車両通行が不可能となった小和沢橋は、以降、主に歩行者専用の橋として利用されるようになりました。かつてダム工事を支え、一時は県道の一部として車両交通を担った橋は、静かに人々が歩いて木曽川を渡るための道へと姿を変えました。

しかし、のぞみ橋はあくまで新丸山ダム工事期間中の仮設橋としての位置づけであり、工事完了後には撤去される予定となっています。そして、井尻八百津線全体のルート見直しに伴う付け替え工事が進められ、2017年（平成29年）には、より大型の車両も通行可能な恒久的な新ルート上の橋梁として「丸山大橋」が完成しました。

丸山大橋の供用開始は、井尻八百津線の主要な交通路が完全に新ルートへ移行することを意味します。この新たな幹線ルートが確立されたことにより、旧ルート上に位置する小和沢橋は、その交通路としての役割を完全に終えることになりました。現在、小和沢橋は歴史的な役割を終えつつあり、前述ののぞみ橋と同様に、将来的に撤去される計画が立てられています。

小和沢橋は、丸山ダムの建設から始まり、時代の変化や新たなダム計画、そして県道付け替えといった複数の要因によってその役割を変遷させてきた橋です。当初の工事用吊橋としての機能、その後の県道としての供用、重量制限による制約、隣接する工事用仮設橋への役割分担、そして歩行者専用化を経て、最終的にはその役目を終えることになっています。短いながらも、日本のインフラ整備と地域交通の変化を物語る一つの歴史的な存在と言えるでしょう。

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