小塩節

小塩節（おしお たかし）

ドイツ文学者、教育者としての生涯

小塩節は、1931年1月10日に長崎県佐世保市で生まれ、2022年5月12日に東京都三鷹市で生涯を閉じました。ドイツ文学者として、中央大学名誉教授、フェリス女学院理事長を歴任し、教育者としても多大な貢献をしました。

学歴と職歴

旧制松本高等学校を経て東京大学独文科を卒業、同大学院を修了しました。1958年には国際基督教大学専任講師となり、その後準教授に昇進。1967年から1985年までNHKの「ドイツ語講座」を担当し、多くの人にドイツ語の魅力を伝えました。

1970年には中央大学文学部教授に就任、常任理事も務めました。1985年から1988年までは駐西ドイツ日本大使館公使、ケルン日本文化会館館長として外交の舞台でも活躍しました。1997年に中央大学を退職し名誉教授となり、フェリス女学院院長、2004年には理事長に就任しました。国際交流基金理事、ひこばえ幼稚園園長なども歴任し、ひこばえ学園長、ケルン大学名誉文学博士の称号も得ています。2015年にはキリスト教功労者として表彰されました。

専門分野と研究活動

専門は18世紀ドイツ文学、特にゲーテに関する研究で知られています。しかし、その活動はドイツ文学にとどまらず、ドイツ語教育、幼児教育、音楽、キリスト教など多岐にわたりました。これらの分野で多くの著作を発表し、教育者として、またキリスト教徒としての思想を社会に発信しました。

家族

妻は英文学者でフェリス女学院大学名誉教授の小塩トシ子、妹は仏文学者の久米あつみ、長男はアメリカ史研究者の小塩和人です。

著作活動

著書は多岐にわたり、『ファウスト ヨーロッパ的人間の原型』、『ドイツ語とドイツ人気質』、『ドイツの都市と生活文化』など、ドイツ文学、文化に関する書籍から、『木々を渡る風』のようなエッセイ集まで、幅広い分野でその才能を発揮しました。

また、『モーツァルト』、『ゲーテ詩集』など、翻訳にも力を注ぎ、ドイツの文化や文学を日本に紹介する上で重要な役割を果たしました。

NHKドイツ語講座

1967年から1985年まで担当したNHKの「ドイツ語講座」は、多くの日本人がドイツ語を学ぶきっかけとなりました。その分かりやすい解説と親しみやすい人柄で、長年にわたり人気を博しました。

教育への情熱

小塩節は、教育者として、特に幼児教育に深い関心を持っていました。フェリス女学院での活動や、『育児の不安はとんでいけ 子どもが花咲く幼児教育』などの著作を通じて、子どもの成長を温かく見守る教育の重要性を訴えました。

キリスト教への信仰

牧師の息子として生まれた小塩節は、生涯にわたりキリスト教への信仰を大切にしていました。著作や活動を通して、キリスト教の教えを広く伝え、人々の心を豊かにしました。

その他の活動

国際交流基金理事として、また、ケルン日本文化会館館長として、日本とドイツの文化交流にも尽力しました。これらの活動を通じて、国際的な視野を持ち、異文化理解を深めることの大切さを説きました。

晩年

晩年まで精力的に執筆活動を続け、2022年5月12日に敗血症のため91歳で亡くなりました。その生涯は、ドイツ文学者、教育者、キリスト教徒として、多くの人々に影響を与え、その遺産は今もなお輝きを放っています。

参考文献

* 荻上悦子著「春寂寥 旧制松本高等学校人物誌」 2008年

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