小山よし姫

小山よし姫は、南北朝時代に小山氏第11代当主・小山義政の正室であったとされる女性です。彼女の存在は、主に小山氏の乱における伝説の中で語られています。地元では「芳姫」の字が当てられており、その悲劇的な最期が語り継がれています。

史料におけるよし姫

よし姫に関する確実な史料は非常に限られています。数少ない資料として、埼玉県北葛飾郡鷲宮の鷲宮神社に残る1372年頃の再興時の棟札があります。この棟札には、夫である小山義政と共に寄進を行った人物として「藤原氏女」と記載されており、これがよし姫であると考えられています。

伝説におけるよし姫

よし姫の伝説は、小山氏の乱における義政の戦いと深く結びついています。義政が鎌倉府との三度目の戦いにおいて、現在の鹿沼市にあった小山氏の粕尾城に籠城した際、よし姫は夫を追って粕尾城へ向かいました。しかし、現在の栃木市星野に至ったところで、悲劇に見舞われます。

村人に宿を提供してもらい、道案内まで頼んだのですが、その村人が、よし姫が持っていた乾飯の袋を黄金の袋と間違え、欲に目が眩んだあげく、よし姫を殺害したと伝えられています。この伝説には不自然な点も指摘されており、別の説では、よし姫は実際には夫や子供と共に粕尾城に籠城し、落城後に落ちのびる途中で家族とはぐれ、事件に巻き込まれたとも考えられています。

殺害されたとされる地点は、小山城と粕尾城を結ぶ約30kmの街道のうち、粕尾城まで約8kmの地点、古道の大越路峠（現在は林道）です。江戸時代に入って、村人たちがよし姫を供養するために墓を建てたとされています。

よし姫を偲ぶ場所

現在、栃木市星野の大応寺には「小山芳姫の御堂」が建てられています。ここには、碑と共に上記の伝説が記されており、よし姫を偲ぶ人々の拠り所となっています。この御堂は、「小山芳姫の墓保存会」によって後年建てられたものです。

小山よし姫の生涯は、史料の少なさから多くが謎に包まれています。しかし、その悲劇的な伝説は、今もなお語り継がれ、人々の心に深く刻まれています。彼女の物語は、歴史の陰に隠れた人々の存在を私たちに教えてくれるとともに、歴史の悲劇を伝える貴重な教訓ともなっています。

関連項目

* 小山氏の乱

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