小山氏

小山氏：武蔵国から下野国へ、そして鎌倉幕府での隆盛

小山氏は、平安時代後期に武蔵国太田郷を本拠とした太田氏をルーツに持つ一族です。藤原秀郷の流れを汲むとされ、1150年頃に太田氏の一族である政光が下野国小山荘に移り住み、小山氏を名乗ったのが始まりとされています。

流祖とその出自

小山氏は藤原秀郷流を称しています。政光は八田宗綱の娘を妻とし、彼女が源頼朝の乳母となったことが、鎌倉時代における小山氏の隆盛を決定づけました。ただし、秀郷の曾孫である兼光から小山政光に至る系譜は、資料によって異同が見られます。

小山政光までの諸系譜

小山政光に至るまでの系譜は複数の文献で異なっており、主なものとして以下のものがあります。

『尊卑分脈』： 兼光━頼行━太田行尊（行高）━行政━小山政光
『群書類従』「小山系図」： 兼光━頼行━太田行尊━行政（宗行）━小山政光
『下野国誌』： 兼光━頼行━太田行尊━宗行━行政━行光━小山政光
「白河結城系図」： 兼光━頼行━太田行隆━宗行━行政━行光━小山政光
「藤姓小山氏系図」： 兼光━頼行━武行━太田行尊━行政━行光━小山政光
「諸家系図纂　結城系図」： 兼光━行範━太田行高━宗行━行政━行光━小山政光

このように、資料によって系譜に異同が見られるため、正確な系譜を特定することは困難です。

幕府の有力氏族として

平安時代末期の治承4年（1180年）に源頼朝が平家に対して挙兵した際、小山政光の三男である朝光は、頼朝の乳母子であったことから、いち早く馳せ参じました。朝光は頼朝から厚い信頼を受け、その後、長男の朝政、次男の宗政も頼朝陣営に参戦し、小山氏は鎌倉幕府において重要な地位を占めることとなりました。寿永2年（1183年）には、志太義広の乱を鎮圧するなどの武功を挙げ、平氏追討戦や奥州合戦にも参陣し、その名を高めました。

政光の死後、家督は長男の朝政が継ぎ、弟たちはそれぞれ長沼氏、結城氏を名乗り、独立した勢力となりました。小山氏は嫡流として、結城家や長沼家は庶流として、下野国南部で勢力を拡大しました。正治元年（1199年）には播磨国守護職に任じられるなど、鎌倉幕府内で重用されました。

相次ぐ争乱と小山氏の苦難

鎌倉幕府滅亡後、小山氏は度重なる争乱に巻き込まれます。元弘の乱や中先代の乱では、当主が討死したり自害したりするなど、大きな打撃を受けました。また、観応の擾乱では足利尊氏に味方したものの、下野国の多くの武士が宇都宮氏に従ったため、苦戦を強いられました。

鎌倉府との戦争、そして最初の断絶

小山氏は、勢力拡大を警戒した鎌倉公方足利氏満との対立を深め、ついに小山義政の乱が勃発します。義政は徹底抗戦しましたが、永徳2年（1382年）に櫃沢城を落とされ自害。子の若犬丸（小山隆政）も敗れて消息不明となり、隆政の子も蘆名氏によって捕らえられ鎌倉に留送中に三浦の海に沈められ、平安時代以来の下野国に君臨してきた小山氏宗家は断絶しました。

再興と再び訪れる断絶

小山氏滅亡後、足利氏満は結城基光の次男である泰朝を小山氏の名跡を継がせました。小山氏は結城氏の影響下で勢力回復に努めます。泰朝の子である満泰は上杉禅秀の乱や小栗満重討伐で活躍し、「関東八屋形」の一角として認められるようになります。満泰の子、小山持政の代になると小山氏は結城氏からの自立を目指しますが、永享の乱で結城氏に敵対し、室町幕府と鎌倉府の対立に巻き込まれます。享徳の乱では足利成氏を支持し、上杉氏と戦いますが、文明3年（1471年）に幕府に帰順。その後、持政の活動は途絶え、死去したと見られています。この2度目の断絶を受けて、一族の山川氏から養子を迎え家名を存続させました。

関東争乱、そして3度目の断絶

山川氏から養子に入った小山成長は、関東各地で繰り広げられる争乱の中で、巧みな外交手腕を発揮し、小山氏の勢力維持に努めました。しかし、成長の子である政長には嗣子がなく、山川氏出身の小四郎と結城政朝の三男である高朝という二人の養子を迎えます。政長の死後、高朝が家督を相続しますが、これが後に小山氏をさらなる苦難へと導くことになります。

下野小山氏の終焉

北条氏の勢力拡大により、小山氏は窮地に立たされます。天正3年（1575年）、北条氏が小山氏領に侵攻し、翌年には居城である祇園城が陥落。当主の秀綱は佐竹義重を頼って逃亡し、ここに400年続いた名門・小山氏は滅亡しました。

江戸時代へ

小山氏は豊臣秀吉による小田原征伐後、結城氏の家臣として再興を試みますが、果たせず、水戸徳川家に仕えることとなります。秀綱の孫である小山秀恒の子孫は、水戸藩士として代々家老を務め、現在に至っています。

小山氏は、その歴史の中で何度も興亡を経験しましたが、その名跡は現代にまで受け継がれています。

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