小悪魔アザゼル18の物語

小悪魔アザゼル18の物語

『小悪魔アザゼル18の物語』は、アイザック・アシモフによるファンタジー短編集です。全18編からなるこの作品は、小悪魔アザゼルを中心に、日常に潜む悩みや願望が、思わぬ形で実現していく様子を描いています。

概要

物語は、語り手である「わたし」（アシモフ自身）が、友人ジョージ・ビターナットから聞くアザゼルの奇妙な体験談、という形式で進みます。ジョージは、先祖伝来の魔術で小悪魔アザゼルを呼び出すことができると豪語する、どこか憎めない人物です。各話では、ジョージの知人たちが抱える問題や願望を、アザゼルが不思議な力で解決しようと試みますが、その過程で必ずと言っていいほど予想外の展開が待ち受けています。

アシモフは当初、ミステリー小説の連載を依頼され、その中でグリズウォルドという人物が小悪魔について語るという形式の作品を執筆していました。しかし、編集者からファンタジー要素を避けるよう注文があったため、小悪魔が登場する作品は掲載されませんでした。その後、主人公をジョージに変更し、小悪魔にアザゼルという名前を与え、ファンタジー雑誌に発表したことが、本シリーズの始まりとなりました。

登場人物

ジョージ・ビターナット:
小悪魔アザゼルを呼び出すことができると主張する中年男性。怠惰で嘘つきな一面もありますが、どこか憎めない性格です。

アザゼル:
身長約2センチの小悪魔。全身が赤く、尻尾を持っています。その正体は悪魔なのか宇宙人なのか定かではありませんが、不思議な力で人々の願いを叶えようとします。

* わたし:
小説家であり、ジョージの友人。物語の語り手であり、アシモフ自身がモデルとなっています。

各話の展開

各話は、ジョージの知人が悩みや願望を抱え、それをジョージがアザゼルに依頼するという形で物語が始まります。アザゼルは不思議な力を使って問題を解決しようとしますが、その力は時に予期せぬ副作用をもたらし、事態は思わぬ方向に展開します。読者は、アザゼルの力によって引き起こされる奇妙な出来事と、その結末に、ユーモアと皮肉を感じることでしょう。

例えば、バスケットボールの才能に恵まれない学生のために、アザゼルがボールが必ずゴールに入るように細工した結果、試合が全く面白くなくなってしまう、といった具合です。また、歌が下手な女性に一夜限りの美声を与えたことで、彼女の人生が大きく変わってしまう、という話もあります。

アザゼルの力は、人々の願望を叶える一方で、人間の欲深さや愚かさを浮き彫りにします。アシモフは、アザゼルを通して、人間の本質を鋭く見つめているのです。

作品の魅力

『小悪魔アザゼル18の物語』の魅力は、何と言ってもそのユーモアです。アシモフは、アザゼルの奇妙な力と、それによって引き起こされる騒動を、軽妙な筆致で描き出しています。また、各話の結末には、必ずと言っていいほど予想外の展開が用意されており、読者を飽きさせません。

さらに、アシモフ自身が登場人物として物語に参加している点も、本作のユニークな点です。「わたし」として登場するアシモフは、ジョージの奇妙な話を半信半疑で聞きながらも、どこか楽しんでいる様子が描かれています。

『小悪魔アザゼル18の物語』は、ファンタジーでありながら、人間の心理や社会を鋭く見つめた作品です。アシモフのユーモアと洞察力が光る、おすすめの一冊と言えるでしょう。

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