小惑星の衛星

小惑星の衛星とは

小惑星の衛星とは、小惑星を周回する天体のことを指します。多くの小惑星が衛星を持っていると考えられており、これらの衛星は、小惑星の起源や進化を理解する上で重要な手がかりとなります。連星小惑星または二重小惑星と呼ばれることもありますが、この名称は、本体と衛星の大きさが近いものに限られます。なお、準惑星の衛星も小惑星の衛星として扱われることがあります。

小惑星の衛星の起源

小惑星の衛星の起源は、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの有力な説が存在します。

衝突説: 親となる小惑星に別の天体が衝突し、その際に飛び散った破片が集まって衛星になったとする説です。この説は、多くの小惑星の衛星の形成を説明できると考えられています。
ラブルパイル説: 衝突によって一度完全に破壊された小惑星が、破片が重力で再集積してラブルパイル（瓦礫の山）を形成する際に、一部の破片が取り残されて衛星になったとする説です。
YORP効果による分裂説: ラブルパイル小惑星の自転が、太陽光の圧力によるYORP効果で加速され、赤道付近が膨らんで最終的に分裂して衛星になったとする説です。

小惑星の衛星の発見

最初に小惑星の衛星らしきものが観測されたのは1978年ですが、確実な発見は1993年のガリレオ探査機による (243) イダの衛星の撮影でした。この衛星は (243) Ida I ダクティルと命名されました。その後、1998年には (45) ウージェニアに衛星が発見され、(45) Eugenia I プティ・プランスと命名されました。

2010年代初頭の時点で、約200個の小惑星に衛星が発見されており、これらの発見は、地上望遠鏡やレーダー観測、光度計測などによって行われています。小惑星帯、トロヤ群、地球近傍小惑星、火星横断小惑星、太陽系外縁天体など、様々な場所に衛星を持つ小惑星が発見されています。特に、補償光学技術の向上は、これらの発見に大きく貢献しています。

二重小惑星と準惑星の衛星

2つの小惑星が互いの重力で共通重心の周りを公転する連星小惑星の代表例は、(90) アンティオペです。2006年に国際天文学連合で新たに定義された準惑星にも衛星を持つものが存在します。冥王星の第1衛星カロンは1978年に発見されましたが、他の衛星は21世紀に入ってから発見されています。

彗星の衛星

2013年1月末現在、彗星の衛星はまだ発見されていません。しかし、彗星・小惑星遷移天体のエケクルスには未発見の衛星がある可能性が指摘されており、2005年に発生したアウトバーストが衛星の影響によるものとする意見があります。

二重小惑星と衛星を持つ小惑星・準惑星

2024年7月現在、二重小惑星または衛星を持つ小惑星および準惑星は、計545個がリストに掲載されています。

接触二重小惑星

接触二重小惑星とは、2つの小惑星が互いに接触した状態で公転しているものです。ダンベルやピーナッツのような形状をしているものが多く、(216) クレオパトラ、(624) ヘクトル、(4769) カスタリア、(25143) イトカワ、(486958) アロコスなどが知られています。

ラブルパイル

ラブルパイルとは、小惑星が衝突によって破壊された破片が、互いの重力でゆっくりと集積して形成されたものです。隙間が多い構造が特徴で、質量と密度を比較することで、ラブルパイルである可能性を判断することができます。はやぶさが探査した小惑星 (25143) イトカワは、ラブルパイルである可能性が高いと考えられています。

外部リンク

Johnston's Archive: Asteroids with Satellites
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