小松光一

小松 光一

小松 光一（こまつ こういち）は、1943年11月20日、北海道空知郡上砂川町に生まれた日本の農学者、農業教育者です。

経歴

1966年に千葉大学文理学部社会科学科を卒業後、農業教育の道に進みました。千葉県農村中堅青年養成所に勤務し、その後、組織改編により千葉県立農業大学校の教官として、次世代の農業を担う若者の育成に尽力しました。1995年には北海道に移り、おびひろ農業塾の塾長に就任。ここでは、単なる技術指導に留まらず、地域に根差した実践的な農業経営や、農業を通じた生き方そのものを教える場を提供しました。また、有機農業や食の安全運動を推進するNPO法人「大地を守る会」の顧問、宮城県角田市農業振興公社の顧問なども務め、広範な視点から日本の農業や農村の課題解決に向けた活動に関与しました。

活動と著作

小松氏は、農業教育者としての経験に加え、多岐にわたるテーマで著作を発表しています。その視点は、農業技術論だけでなく、社会科学、地域論、教育論、さらには文化人類学にも及びます。

初期の著作では、『若きドンファーマへのメッセージ』や『私の青年団改造論 若きカントリーヒーローへのメッセージ』といったタイトルに見られるように、未来を担う青年農業者や農村の若者への熱いメッセージを送っています。「おもしろ農民」という言葉をキーワードに、従来の近代化一辺倒の農業から脱却し、自らの頭で考え、地域に根差した個性的な農業を実践することの重要性を説きました。『おもしろ農民への招待状』などの著作を通じて、農業の魅力を再発見し、創造的な担い手を育成することを目指しました。

また、地域社会や祭り、人々のつながりにも着目し、『ヒト,ムラ,マツリの地域論 地域の自立と祝祭』や、共編著の『風の地域宣言』などで、都市化・工業化の中で見失われがちな地域固有の文化や人間関係の重要性を論じました。特に『エコミュージアム 21世紀の地域おこし』では、地域の自然や文化遺産を活かした新たな地域活性化の可能性を提示しています。

食と農業の関わりについても深く考察しており、『農業がおもしろくなる本 人間の命と農業問題』では、生命を支える農業の本質と、それが抱える現代的な課題について分かりやすく解説しました。共著『いま、日本人の食べ物があぶない! 日本の農林水産業』では、食料問題への警鐘を鳴らし、共著『いのちと暮らしを守る株式会社 ネットワーキング型のある生活者運動』では、「大地を守る会」などとの連携を通じて、生産者と消費者が一体となった新しい社会運動のあり方を提案しています。

さらに、国際的な視野も持ち、橋本紘二氏の写真と共に発表した『北タイ焼畑の村 天地有情』や『クリヤーの山 タイ・山岳少数民族の暮らし』では、タイ山岳少数民族の暮らしや伝統的な焼畑農業を紹介し、異なる文化や環境における人々の営みと自然との共生について考察しています。

晩年には、『自給と産直で地域をつくる 個性化する日本とアジアの農業』といった著作で、食料自給率の向上や地域内での生産・消費の循環、そしてアジア諸国の農業の多様性にも目を向け、持続可能な農業と地域づくりに向けた具体的な提言を行いました。

小松 光一氏は、農業教育、地域振興、食と環境問題、そして社会運動といった多岐にわたる分野で活動し、著作を通じて日本の農業や農村、そして人々の暮らしのあり方について、問いかけと提案を続けました。その活動は、多くの農業関係者や地域づくりに取り組む人々に影響を与えています。

主な共編著には、『いのちの風農のこころ 実力派おもしろ農民の時代』、『山間地農村の産直革命 山形村と大地を守る会の出会い』、『浪漫・亀の尾列島』などがあります。

論文については、Ciniiなどでその発表を確認することができます。教育者、研究者、そして実践者としての多角的な視点は、日本の農業が変化する中で、常に新しい可能性を示唆し続けています。

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