小林商会

小林商会：幻の映画会社、その光芒と終焉

小林商会は、1914年に設立され、1917年に倒産した、大正初期の東京に存在した映画会社です。設立者は小林喜三郎で、無声映画の製作と配給を行っていました。しかし、その活動期間はわずか1年程度と短命に終わりました。

設立前夜：常盤商会と東洋商会

小林喜三郎は、もともと東京の映画会社「常盤商会」に所属していました。当時、常盤商会は、大阪の山川吉太郎が設立した「東洋商会」に、日暮里撮影所を提供していました。東洋商会が映画製作・配給を行っていましたが、その後、「小林商会」がその役割を引き継ぐ形で映画製作を開始しました。

1914年1月11日には、設立第一作として『有馬怪猫伝』と『無尽の夫婦』が公開されました。しかし、同年3月には製作と配給を休止しています。

天活の設立と競合

1914年3月17日、小林と山川は「天然色活動写真」（天活）を設立します。本社を東京・日本橋に置き、日暮里撮影所を「天然色活動写真日暮里撮影所」としました。しかし、同年9月には小林も山川も取締役を辞任し、それぞれが「小林商店」と新設の「山川興行部」に天活から興行権を分割して委任されました。

1916年秋には製作を再開し、元福宝堂の脚本家である篠山吟葉や、天活の役者を多く引き抜きました。引き抜かれた人材の中には、中村秋孝、佐川素経、井上正夫、栗島狭衣などがいました。

1916年10月30日には、『母の心』、翌31日には『霊火』が製作再開作品として公開されました。その後も撮影部の長井信一を天活から引き抜くなど、人材獲得に力を入れました。そして翌1917年には、フル稼働で55本もの映画を量産しました。

小林商会は天活をライバル視し、量産とともに奇策を放ちました。1917年3月11日、天活が製作した菊池幽芳原作の映画『毒草』の公開日に、まったく同じ原作、同じタイトルで、天活から引き抜いた井上正夫監督による『毒草』をぶつけてきたのです。さらには同月内に、同一原作、高部幸次郎主演の中篇映画『毒草』を公開しました。

幻のアニメーション映画

1916年、小林商会は東京パック社から漫画家幸内純一を引き抜き、アニメーション映画を製作させました。これは、日活や天活がアニメーション製作を開始したことに対抗したものでした。最終的に天活の『凸坊新畫帖 芋助猪狩の巻』が「国産初のアニメ映画」の称号を勝ち取りましたが、小林商会は6か月遅れて、幸内監督の『塙凹内名刀之巻』を発表しました。

短命に終わった理由

しかし、こういった無理がたたり、小林商会は製作再開後1年足らずで倒産してしまいます。1917年8月31日に公開された『佑天吉松』と『かがやき』が最後の作品となりました。

小林商会の倒産後、小林は1919年にD・W・グリフィス監督の映画『イントレランス』の日本での興行を仕掛け、高額な入場料を設定して話題を呼びました。

フィルモグラフィ

小林商会は、4年間で80本近くの映画を製作・配給しました。1917年だけでも55本もの映画が製作されました。

主な作品:

有馬怪猫伝 (1914年)
無尽の夫婦 (1914年)
母の心 (1916年)
霊火 (1916年)
塙凹内名刀之巻 (1917年)
佑天吉松 (1917年)
* かがやき (1917年)

小林商会は、短命ながらも大正初期の映画界に大きな影響を与えた映画会社でした。

もう一度検索