小林治人
小林治人（こばやし はると、1937年 - ）は、日本の現代ランドスケープデザイン分野において極めて重要な役割を果たしてきた人物です。長野県松本市に生まれ、その生涯を通じて日本の景観形成と造園技術の向上に貢献しました。英国ランドスケープ学会の名誉会員にも選ばれるなど、国際的な評価も確立しています。
小林氏は、1960年に国家公務員試験上級造園職に合格するという優れた成績を収めました。翌1961年には東京農業大学農学部造園学科を卒業。卒業後、建設省に勤務し、1963年まで新潟県に派遣されました。この公共部門での経験は、氏のキャリアの基盤を築く上で非常に重要でした。新潟県では、土木部技術吏員として、特に三条や長岡における大規模な災害からの復旧事業、そして直江津港の背後地の土地区画整理事業といった、地域社会の復興とインフラ整備に直結するプロジェクトに従事しました。これらの現場での実践的な経験は、後の広範な活動に活かされることとなります。
建設省での勤務を終えた後、小林氏は東京コンサルタントに籍を置きつつも、ランドスケープ分野の専門性をさらに深めるため、友人たちと共にLA規格制作事務所を設立しました。そして1968年、株式会社東京ランドスケープ研究所を創設し、自ら代表取締役社長に就任しました。これにより、大規模かつ多様なランドスケーププロジェクトを専門的に手掛ける体制を構築しました。同社は日本のランドスケープ設計業界を代表する存在へと成長し、小林氏は長きにわたり経営を指揮しました。2016年には代表取締役会長、そして2018年には会長（founder）となり、第一線での実務から次世代への指導へと役割を移しつつも、その影響力を保ち続けました。
東京ランドスケープ研究所での活動に加え、小林氏は日本のランドスケープ分野の発展に寄与するため、様々な公的団体や業界団体で重要な役職を歴任しました。一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会の顧問として、業界の健全な発展と専門性の向上に貢献しました。公益社団法人日本造園学会では名誉会員の称号を得て、学術的な側面からも分野を支えました。国際的な活動としては、英国ランドスケープ学会の名誉副会長を務め、国内外のランドスケープデザイン交流促進に尽力しました。また、社会的な活動にも熱心に取り組み、「東日本に花を咲かせ隊」の隊長として震災からの復興支援に関わるなど、ランドスケープの持つ社会的な可能性を追求しました。景観における光の重要性に着目し、ライティングコーディネート協会の顧問も務めました。
小林氏の長年にわたる多大な貢献は、国内外で高く評価され、数多くの受賞と栄典に結びついています。
主な受賞歴には以下のようなものがあります。
1972年：社団法人日本造園学会賞（設計部門）、東京農業大学造園大賞
1992年：社団法人日本公園緑地協会北村賞
1993年：建設大臣表彰
1997年：社団法人日本公園緑地協会佐藤国際交流賞
2001年：都市緑化推進功労賞
2009年：日本造園学会上原敬二賞（日本の造園分野で最高の栄誉の一つとされる）
また、国家からの顕彰も受けています。
1995年：黄綬褒章（業務に精励し衆民の模範たる者に対する栄典）
2007年：旭日小綬章（国家又は公共に対し功労のある者に対する栄典）
これらの受賞歴と栄典は、小林氏がランドスケープデザインの実践、理論、そして社会貢献の各方面で多大な成果を挙げたことの明確な証です。
小林氏は、設計活動で培った経験と独自の思想を、数多くの著作として世に送り出しました。特に注目すべきは、氏の設計哲学である「設景（せっけい）」に関する著作群です。単著として、自身の思想と実践を体系的にまとめた『ランドスケープデザイン（設景の世界）』（全3巻、1994年）、そしてその核心に迫る『「設景」その思想と展開』（1996年）があります。これらの著作は、単なる造園技術に留まらない、景観に対する深い洞察と哲学を示しています。
また、『ランドスケープ・造園計画設計―小林治人とその仲間の仕事』（1982年）は、具体的なプロジェクト事例を通して、その設計手法やチームでの仕事の進め方を紹介しており、実務家にとって参考となる一冊です。これらの単著に加え、『建築設計資料集成5』（日本建築学会編）、『ランドスケープ大系 3巻』（日本造園学会編）、『造園ハンドブック』（日本造園学会編）といった、日本の建築・造園分野における重要な共著にも多数参加しており、分野全体の知識基盤の充実に貢献しました。
小林治人氏は、戦後の日本の復興期から高度成長期、そして現代に至るまで、約半世紀以上にわたりランドスケープアーキテクトとして活動を続けました。公共事業、民間開発、都市計画から詳細設計に至るまで、幅広い分野で数多くのプロジェクトを手掛け、「設景」という独自の概念を通じて日本の景観デザインに深い影響を与えました。教育者、執筆家、そして業界団体のリーダーとしても後進の育成と分野の発展に尽力し、日本のランドスケープ分野の地位確立に貢献した、真のパイオニアと言える人物です。その功績は、今日の日本の豊かな景観創造の礎となっています。
初期キャリアと公共事業
小林氏は、1960年に国家公務員試験上級造園職に合格するという優れた成績を収めました。翌1961年には東京農業大学農学部造園学科を卒業。卒業後、建設省に勤務し、1963年まで新潟県に派遣されました。この公共部門での経験は、氏のキャリアの基盤を築く上で非常に重要でした。新潟県では、土木部技術吏員として、特に三条や長岡における大規模な災害からの復旧事業、そして直江津港の背後地の土地区画整理事業といった、地域社会の復興とインフラ整備に直結するプロジェクトに従事しました。これらの現場での実践的な経験は、後の広範な活動に活かされることとなります。
東京ランドスケープ研究所の設立と発展
建設省での勤務を終えた後、小林氏は東京コンサルタントに籍を置きつつも、ランドスケープ分野の専門性をさらに深めるため、友人たちと共にLA規格制作事務所を設立しました。そして1968年、株式会社東京ランドスケープ研究所を創設し、自ら代表取締役社長に就任しました。これにより、大規模かつ多様なランドスケーププロジェクトを専門的に手掛ける体制を構築しました。同社は日本のランドスケープ設計業界を代表する存在へと成長し、小林氏は長きにわたり経営を指揮しました。2016年には代表取締役会長、そして2018年には会長（founder）となり、第一線での実務から次世代への指導へと役割を移しつつも、その影響力を保ち続けました。
主要な所属団体と社会貢献
東京ランドスケープ研究所での活動に加え、小林氏は日本のランドスケープ分野の発展に寄与するため、様々な公的団体や業界団体で重要な役職を歴任しました。一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会の顧問として、業界の健全な発展と専門性の向上に貢献しました。公益社団法人日本造園学会では名誉会員の称号を得て、学術的な側面からも分野を支えました。国際的な活動としては、英国ランドスケープ学会の名誉副会長を務め、国内外のランドスケープデザイン交流促進に尽力しました。また、社会的な活動にも熱心に取り組み、「東日本に花を咲かせ隊」の隊長として震災からの復興支援に関わるなど、ランドスケープの持つ社会的な可能性を追求しました。景観における光の重要性に着目し、ライティングコーディネート協会の顧問も務めました。
顕著な受賞と栄典
小林氏の長年にわたる多大な貢献は、国内外で高く評価され、数多くの受賞と栄典に結びついています。
主な受賞歴には以下のようなものがあります。
1972年：社団法人日本造園学会賞（設計部門）、東京農業大学造園大賞
1992年：社団法人日本公園緑地協会北村賞
1993年：建設大臣表彰
1997年：社団法人日本公園緑地協会佐藤国際交流賞
2001年：都市緑化推進功労賞
2009年：日本造園学会上原敬二賞（日本の造園分野で最高の栄誉の一つとされる）
また、国家からの顕彰も受けています。
1995年：黄綬褒章（業務に精励し衆民の模範たる者に対する栄典）
2007年：旭日小綬章（国家又は公共に対し功労のある者に対する栄典）
これらの受賞歴と栄典は、小林氏がランドスケープデザインの実践、理論、そして社会貢献の各方面で多大な成果を挙げたことの明確な証です。
著作活動と思想「設景」
小林氏は、設計活動で培った経験と独自の思想を、数多くの著作として世に送り出しました。特に注目すべきは、氏の設計哲学である「設景（せっけい）」に関する著作群です。単著として、自身の思想と実践を体系的にまとめた『ランドスケープデザイン（設景の世界）』（全3巻、1994年）、そしてその核心に迫る『「設景」その思想と展開』（1996年）があります。これらの著作は、単なる造園技術に留まらない、景観に対する深い洞察と哲学を示しています。
また、『ランドスケープ・造園計画設計―小林治人とその仲間の仕事』（1982年）は、具体的なプロジェクト事例を通して、その設計手法やチームでの仕事の進め方を紹介しており、実務家にとって参考となる一冊です。これらの単著に加え、『建築設計資料集成5』（日本建築学会編）、『ランドスケープ大系 3巻』（日本造園学会編）、『造園ハンドブック』（日本造園学会編）といった、日本の建築・造園分野における重要な共著にも多数参加しており、分野全体の知識基盤の充実に貢献しました。
結び
小林治人氏は、戦後の日本の復興期から高度成長期、そして現代に至るまで、約半世紀以上にわたりランドスケープアーキテクトとして活動を続けました。公共事業、民間開発、都市計画から詳細設計に至るまで、幅広い分野で数多くのプロジェクトを手掛け、「設景」という独自の概念を通じて日本の景観デザインに深い影響を与えました。教育者、執筆家、そして業界団体のリーダーとしても後進の育成と分野の発展に尽力し、日本のランドスケープ分野の地位確立に貢献した、真のパイオニアと言える人物です。その功績は、今日の日本の豊かな景観創造の礎となっています。
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