小森龍邦

小森龍邦

小森龍邦（こもり たつくに、1932年7月30日 - 2021年2月26日）は、日本の部落解放運動家、政治家です。部落解放同盟広島県連合会委員長、同中央本部書記長、広島県府中市議会議員、衆議院議員、新社会党中央執行委員長などを歴任し、部落解放運動に生涯を捧げました。

生涯と活動

広島県府中市出身の小森龍邦は、1951年に広島県立府中高等学校を卒業後、部落解放運動に身を投じます。1962年には日本社会党に入党し、部落解放同盟の専従活動家として頭角を現しました。1960年代後半の解放同盟分裂時には、日本共産党主導の広島県連に対抗し、中央本部につながる広島県連の再建に尽力、県連委員長に就任します。彼のリーダーシップのもと、広島県東部を中心に組織を拡大し、県内の運動を大きく発展させました。

1982年には、部落解放同盟中央本部書記長に就任し、事実上の最高権力者として同盟を指導しました。1984年の新綱領制定にも主導的な役割を果たし、その理論的支柱としての地位を確立します。

しかし、長期にわたる書記長在任中には、解放同盟内部で運動方針に関する意見の相違が生じました。1993年の細川護煕連立政権樹立を機に、保守系勢力との連立のために社会党執行部が右傾化していると批判し、他の幹部と対立。1994年には政治改革法案への反対を理由に書記長を辞任しました。その後も広島県連への影響力を保持し、中央本部とは一定の距離を保ちました。

政治家としては、1990年の第39回衆議院議員総選挙で旧広島3区から初当選。1993年の第40回衆議院議員総選挙でも再選を果たしました。しかし、1994年に社会党を離党し、新社会党の結成に参加。1996年の第41回衆議院議員総選挙で落選し、議席を失いました。その後、2002年には新社会党委員長に就任しましたが、党勢の回復は叶いませんでした。

部落解放問題に関する主張

小森は一貫して部落民自身による部落問題の解決を主張し、政府の同和対策を批判しました。強硬な姿勢を貫き、外部からの批判も受けましたが、自身の信念を曲げることはありませんでした。藤田敬一の著書『同和はこわい考』を批判し、解放同盟周辺の知識人とも論争を展開しました。また、テレビ番組や雑誌の対談にも積極的に出演し、部落解放運動の正当性を訴えました。

オランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレンの著書における部落差別に関する記述に対して抗議を行い、部落差別の判定権は部落民にのみあるという独自の理論を展開しました。

晩年と死

晩年は著述活動に力を入れ、部落問題に関する著作を多数発表しました。2021年2月26日、肺炎のため府中北市民病院で死去。88歳でした。

著書

小森龍邦は、部落問題に関する多数の著書を執筆しました。以下はその一部です。

『現代における部落問題の本質』
『差別と疎外からの解放 社会意識としての差別観念』
『部落解放運動 その批判と反批判』
『人間・阿部正弘とその政治 危機の時代を生きる発想』
『解放運動の再生 共に闘ってきた人々へ』
『親鸞思想に魅せられて 仏教の中の差別と可能性を問い直す』

これらの著作は、部落問題に関する彼の思想と運動を知る上で貴重な資料となっています。

評価

小森龍邦は、部落解放運動の理論的指導者として、また政治家として、日本の社会運動史に大きな足跡を残しました。彼の強固な信念と行動力は、多くの人々に影響を与え、部落問題の解決に向けて大きな貢献を果たしました。

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