小田俊与

小田俊与：異色の活動家、その生涯と選挙戦術

小田俊与（1907年 - 不詳）は、沖縄県出身（自称は広島県）の洋画家、彫刻家でありながら、作詞家、政治活動家、そして異色の選挙戦術家として知られています。彼は山下新太郎に師事し、芸術家として活動する傍ら、右翼運動や出版活動を通じて戦時下の世論形成に深く関与しました。

戦前・戦中の活動

小田は日中戦争期より、右翼団体を組織し活動を活発化させました。上京後は出版界に進出し、『日本新國策研究所主宰』の肩書きで東條英機周辺に取り入り、著書や戦時歌謡を通じて東條らを英雄として礼賛しました。彼の活動は、戦時体制を支持し、国民の戦意を高揚させることを目的としていました。

戦後のゲリラ的選挙闘争

戦後、実兄である小田榮（社会大衆党の衆議院議員）が公職追放されると、小田俊与は1951年の東京都知事選挙を皮切りに、独自の選挙戦術を展開します。それは、全国各地の首長選挙や国政選挙、さらには町村長選挙にまで、予告なく立候補するというものでした。しかし、彼は具体的な選挙運動を行わず、現地に姿を現すことすら稀でした。そのため、選挙権を持たない自治体の長選挙にも立候補し、得票数0ということもありました。

「幽霊候補」と呼ばれた男

小田の行動は、原水爆反対という主張にもかかわらず、「幽霊候補」として関係者から冷ややかな目で見られました。彼は、候補者が無投票当選すると見込まれる地方自治体に、選挙費用と混乱を強いる存在と見なされたのです。しかし、小田自身は「泡沫候補」と呼ばれることを嫌い、批判的な報道に対しては訴訟をほのめかすこともありました。

公職選挙法改正のきっかけ

小田の無差別な連続立候補は、当時の法制度の不備を突いたものでした。通信手段が未発達だったこともあり、彼の掛け持ち出馬を事前に阻止することは困難でした。その結果、彼の立候補回数は500回以上に達し、国会でも問題視されることになります。そして1964年、立候補の届け出を郵送から選挙管理委員会への直接持ち込みに限定する公職選挙法改正の一因となりました。

特殊株主、そして詩人として

小田は特殊株主としても知られ、日本航空を執拗に糾弾する文書を発行していました。また、詩人としても活動を続け、詩集「覚えはない」などを発表しています。

まとめ

小田俊与は、その生涯を通じて多様な顔を見せた人物でした。戦時中は世論を扇動する役割を担い、戦後はゲリラ的な選挙戦術で注目を集めました。彼の行動は、当時の社会情勢や法制度の隙間を縫うものであり、その評価は分かれるところです。しかし、彼の特異な活動は、日本の選挙史に特異な足跡を残したことは間違いありません。

主な著書・作詞

著書：『翼賛運動と近衛公』、『聖戰劃帳 戰ふ東條首相』、『ヒューマニズム詩集 覚えはない アイクとマレンコフへ』など
作詞：『カチヌケニッポン』、『宣戰の大詔』、『東條兵團』など、多数の戦時歌謡を作詞

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