小田原一家5人殺害事件

小田原一家5人殺害事件

事件概要

1949年（昭和24年）9月14日未明、神奈川県小田原市井細田の銭湯「田浦湯」で発生した凄惨な大量殺人事件です。当時18歳だった少年Sが、隣家にあった銭湯経営一家を襲撃。経営者を含む大人3人と幼い子供2人の計5人が殺害され、18歳の長女が重傷を負いました。

犯人の背景

犯人のSは1931年5月2日生まれで、事件当時は18歳4ヶ月でした。被害者宅の隣家に居住。幼少期に両親と死別し叔父に引き取られて育ちましたが、事件当時は失業中でした。過去には窃盗で検挙された経歴もありました。

事件の動機と経緯

事件の発端は、犯行の約3ヶ月前、Sが銭湯の女湯を覗き見していたところを経営者Aに注意されたことへの逆恨みとされるものです。銭湯側が目隠しを設置したことにSは憤慨し、A殺害を決意。約1ヶ月前には犯行に使う包丁を購入して準備しました。

事件当日深夜、Sは包丁を持ち被害者宅に侵入。家の中で見つけた鉈も使用し、就寝中の大人3人を殺害しました。続いて幼い子供2人を電気コードと包丁で殺害。さらに長女も鉈で襲撃し重傷を負わせました。約40分に及ぶ犯行後、現金約600円を奪って帰宅。同居していた叔父に犯行を打ち明け、自首しました。

裁判と死刑確定

Sは強盗殺人罪などで起訴されましたが、裁判では殺人罪などが認定されました。横浜地方裁判所小田原支部は1950年1月12日、Sに死刑判決を言い渡しました。Sは控訴後、一時取り下げの意向を示しましたが、裁判長の説得で継続。東京高等裁判所も控訴を棄却し死刑判決を支持しました。最高裁判所は1951年9月6日、死刑制度の合憲性や犯行時18歳以上の少年への死刑適用を認め、Sの上告を棄却。これにより死刑が確定しました。

恩赦による減刑と仮出所

死刑確定後、Sは仙台拘置支所へ移送されましたが、サンフランシスコ講和条約発効記念の恩赦により、1952年9月23日付で無期懲役に減刑されました。

宮城刑務所で服役後、模範囚として1970年3月、38歳で仮出所。東京都内の印刷会社に就職し、社会生活を送っていました。

仮釈放後の再犯

仮出所から14年後の1984年7月8日、53歳となっていたSは再び事件を起こします。同棲していた13歳の家出少女Xが友人宅へ身を寄せたことに憤慨し、少女Xとその友人である14歳の少女Yの2人をナイフで襲撃、負傷させました。殺人未遂容疑で逮捕され、同年12月19日、東京地方裁判所で懲役8年の実刑判決を受けました。この判決により仮釈放が取り消され、Sは無期懲役刑に戻り、宮城刑務所に再び収容されました。

その後の消息と生存者の思い

Sのその後の明確な消息は不明です。事件を取材したジャーナリストは、2009年2月に宮城刑務所で発生した70代男性受刑者の首吊り自殺がSである可能性を指摘しています。

事件で唯一生き残った長女F（事件時18歳、2014年当時は83歳）は取材に対し、Sの恩赦と再犯を知っていたと述べています。Sから一度、墓参りの申し出があったそうですが拒否したとのこと。「家族を虫けらのように殺したのだから、Sも一生刑務所で苦しみ獄死すればいい」と語り、家族を奪われた深い悲しみと犯人に対する強い憤りを表しました。

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