小田急美術館

小田急美術館：新宿の文化拠点としての軌跡

小田急美術館は、かつて東京都新宿区西新宿に位置する小田急百貨店本店の11階に存在した美術館です。1967年の小田急百貨店本館開業と同時に、「文化大催物場」として誕生しました。その後、1973年には「小田急グランドギャラリー」へと名称変更され、さらに1992年には現在の名称である「小田急美術館」に改称されました。2001年の閉館まで、数々の印象的な展覧会を開催し、新宿の文化を彩る重要な役割を担っていました。

多彩な展覧会：現代美術から巨匠の作品まで

小田急美術館は、その存在期間を通して、多岐にわたる展覧会を開催することで知られていました。開催された全展覧会の記録は、国立新美術館に保管されています。ここでは、特に記憶に残る代表的な展覧会をいくつかご紹介しましょう。

1992年には、夭折の画家として知られるスーチン没後50年を記念した「スーチン展：生誕100年記念展」が開催されました。彼の力強い筆致と独特の世界観は、多くの来場者を魅了しました。翌1993年には、「ルネ・ラリック展：アール・デコのきらめき展」が開催され、アール・デコ様式の華麗なガラス工芸の数々が展示されました。

1994年には、日本のシュルレアリスムを代表する画家、小山田二郎の個展「小山田二郎展：異形の心象風景/ベールをぬぐ伝説展」が開催されました。彼の幻想的で神秘的な作品世界は、多くの鑑賞者に深い感銘を与えました。1995年には、「ベルナール・ビュッフェ展：画業50年・自選で回顧する展」を開催。ビュッフェ自身の選りすぐりの作品を通して、画業50年を振り返る貴重な機会となりました。

1996年には、「エッシャー展：甲賀コレクション/生誕100年記念展」が開催され、エッシャーの幾何学的で不思議な作品世界が展示されました。錯視を利用した独特の表現は、老若男女問わず多くの来場者を惹きつけました。そして、2000年には、劇作家、演出家、詩人として多方面で活躍した寺山修司をテーマにした「寺山修司展：テラヤマ・ワールド/きらめく闇の宇宙展」が開催されました。彼の作品世界を多角的に紹介する、充実した内容でした。

新宿における文化施設としての役割

小田急美術館は、単なる美術館という枠を超え、新宿という街の文化を支える重要な拠点でした。百貨店の中に位置していたという立地条件も、多くの人々が気軽に美術作品に触れ合える機会を提供する上で、大きな役割を果たしていました。閉館から年月が経った現在でも、小田急美術館で鑑賞した作品や展覧会の記憶は、多くの人々の心に深く刻まれています。その存在は、新宿の文化史において、重要な一ページを飾っていると言えるでしょう。

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