小西祥子

小西 祥子（こにし さちこ、1982年2月4日生まれ）は、大阪府堺市出身の元陸上競技選手です。主に競歩を専門とし、日本を代表するアスリートの一人として活躍しました。特に2008年の北京オリンピックでは、女子20km競歩の日本代表として選出されています。

陸上競技との関わりは小学校時代に始まり、校内マラソン大会では6年連続で学年1位となるなど、その才能の片鱗を見せていました。堺市立庭代台中学校では陸上競技部に入部し、熱心な練習に取り組みますが、地区大会での優勝には手が届きませんでした。しかし、顧問の「高校で伸びる」という言葉を信じ、高校でも競技を続けることを決意します。初芝高等学校（現在の初芝立命館高等学校）に進学後、高校1年生から競歩を始めました。当初は速く走るためのトレーニングの一環として捉えていましたが、やがて競歩選手としての頭角を現します。1998年と1999年には、全国高等学校総合体育大会（インターハイ）の3000m競歩で2年連続優勝を果たす快挙を達成しました。国民体育大会でも連覇を目指しますが、惜しくもラストで逆転され、悔しさを味わいました。

2000年に筑波大学体育専門学群へ進学。大学1年次から主要な学生大会で活躍します。5月には関東学生陸上競技対校選手権大会（関東インカレ）5000m競歩で2位、9月には日本学生陸上競技対校選手権大会（日本インカレ）の同種目で、1年生ながら優勝を果たしました。日本インカレ直後の日本ジュニア選手権でも5000m競歩で優勝するなど、早くから学生トップ選手としての地位を確立しました。2001年には3月のびわ湖全日本女子競歩大会で3位に入り、7月のアジアジュニア選手権（ブルネイ・バンダルスリブガワン）では20km競歩で金メダルを獲得。これは日本勢として初めて中国選手を破っての優勝でした。同年9月の日本インカレ5000m競歩でも2位以下を大きく引き離して優勝し、2002年には同種目で3連覇を達成しています。

大学4年時の2003年7月、日本インカレ5000m競歩で当時の日本学生記録を更新する記録を出しましたが、他の選手が更に上回ったため2位となりました。この大会はユニバーシアード（韓国・大邱）の代表選考を兼ねており、小西氏は代表に選ばれ、20km競歩で4位入賞という好成績を収めました。

大学卒業後、小西氏は地元の堺市に戻り、一度は整形外科に就職します。しかし、競技を続ける上での環境は厳しく、十分な練習時間を確保することが困難になりました。そのため別の道を模索し、所属先が決まらないままアルバイトで生計を立てながら競技を続けるという状況に陥ります。就職活動では「競歩選手はテレビに映らない」といった理由で断られることもあったといいます。こうした状況に対し、日本陸上競技連盟の「スポーツ活動支援制度」の対象者となるなど、外部からの支援も受けながら競技継続への道を切り開きました。練習は堺市内の公園などを使い、高校時代のコーチの指導を受けながら一日6時間もの時間を費やしました。大会や合宿には自費で参加するなど、困難を乗り越えて競技に打ち込みました。

社会人となってからも、国内や国際大会で実績を積み重ねます。2005年には世界選手権（フィンランド・ヘルシンキ）に出場しますが、レース中に意識を失い途中棄権という不運に見舞われました。一方で、同年11月の東アジア競技大会（マカオ）では20km競歩で銅メダルを獲得しています。2007年10月には秋田わか杉国体の成年女子10000m競歩で、当時の日本新記録を樹立して優勝。これが社会人として初めて掴んだ国内タイトルとなりました（この記録は後に更新されます）。

そして、競技生活における最大の目標であったオリンピック出場を果たします。2008年、北京オリンピックの日本代表に選出され、女子20km競歩に出場。本番では完歩し、26位という結果を残しました。

競技生活は怪我との戦いでもありました。特にオリンピック代表選考レース直前にも怪我を再発しますが、家族の温かい励ましに支えられ、困難を乗り越えて代表の座を掴み取った経験を持っています。小西氏は、このような自らの経験を講演などで語り、多くの人々に勇気を与えています。数々の勝利を収める一方で、多くの敗戦も経験してきました。しかし、敗れるたびに自らの課題を分析し、ライバルとの駆け引きを学ぶなど、選手として精神的にも成長を遂げました。競技に対する姿勢は真摯であり、「真剣勝負」の考えからレース前には化粧をしないなどのこだわりを持っていました。

経済的な苦境や度重なる怪我、そして就職難といった様々な困難に直面しながらも、競歩への情熱を失わず競技を継続した小西祥子氏のキャリアは、その強い意志と不屈の精神を示すものです。日本競歩界において、一時代を築いた選手の一人として記憶されています。

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