小谷善行

小谷善行：計算機科学とパズルの世界を繋ぐ先駆者

小谷善行氏は、1949年兵庫県神戸市生まれ、神奈川県川崎市育ちの日本の計算機科学者です。東京大学工学部計数工学科を卒業後、同大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程を修了し、工学博士の学位を取得しました。博士論文のテーマは「文脈同値関係による言語構造の学習的推論」という、計算機科学における高度な研究内容です。

学生時代は、将棋部やSF研究会などにも所属し、多様な活動に携わっていました。特にSF研究会では、後に日本SF界に大きな影響を与えることになる「ハチャハチャ」という表現の普及にまつわる逸話も残されています。

東京農工大学工学部では、数理情報工学科の設立当初から教員として参加。専任講師、助教授を経て、1993年から2014年まで教授を務め、現在は名誉教授として活躍しています。

小谷氏の研究分野は、音楽情報処理など人間とコンピュータのインタラクション、そして人工知能に関連するパズルやゲームの研究に及びます。彼は、この分野、特に日本ではまだ学術分野として確立していなかった「ゲーム情報学」の確立に多大な貢献を果たしました。

コンピュータ将棋においても、小谷氏は先駆的な役割を担いました。1980年代初頭からコンピュータ将棋の研究開発に携わり、1986年には瀧澤武信氏らと共に「将棋プログラムの会」を設立（後にコンピュータ将棋協会に発展）。2001年まで同協会の会長を務め、現在も副会長として活動しています。

コンピュータ科学における研究活動と並行して、小谷氏は熱心なパズル愛好家でもあります。7000個以上ものパズルを収集するコレクターとして知られ、自らも多くのパズルを創作しています。現在では「パズル懇話会」の会長として、パズル文化の普及にも尽力しています。

彼の活動は、研究室での高度な計算機科学の研究から、パズル愛好家としての活動、そしてコンピュータ将棋協会での指導的役割まで多岐に渡ります。その多様な活動を通して、小谷氏は常に人間とコンピュータの関わりについて探求し続け、その知見を社会に還元し続けています。

主な著書

小谷氏は、数多くの著書を執筆・翻訳しています。その内容は、BASICプログラミングからProlog、コンピュータ将棋、そして様々な種類のパズルまで多岐に渡ります。これらは、計算機科学の入門書から専門書、そして一般向けのパズル解説書まで幅広く、多くの人々に計算機科学やパズルの魅力を伝える役割を果たしています。代表的な著書には以下のものがあります。

マイコンとパズルの世界
コンピュータ将棋の頭脳：人間に追いつく日はいつ？
わくわくパズルランド
数学パズルチャレンジ超問120
ゲーム計算メカニズム：将棋・囲碁・オセロ・チェスのプログラムはどう動く
人間に勝つコンピュータ将棋の作り方(共著)

これらの著書は、多くの読者に計算機科学やパズルの面白さを伝え、分野の発展に貢献してきました。小谷氏の活動は、計算機科学とパズルの世界を繋ぎ、両分野の進歩に大きく寄与していると言えるでしょう。彼の今後の活動にも期待が高まります。

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