小部 (パーリ)

小部（しょうぶ、Khuddaka Nikāya）

小部、またの名をKhuddaka Nikāyaは、仏教のパーリ経典に属する「五部」の一部であり、特に最後の部に位置しています。広範かつ多様な教えを含むこの経典は、他の部に振り分けることができない特異な性質を持っています。そのため、しばしば「残余」とも称されます。この名称は、初めに収録されている『小誦経』に由来しています。

小部は、その名にもかかわらず、内容は決して小さくはありません。むしろ、『本生経』や『譬喩経』を中心に、膨大な分量を誇る経典集です。実際、『南伝大蔵経』の全体の中でも特に多く、全22巻に及ぶ収録があります。対照的に、他の部は比較的少ない巻数で構成されています。例えば、長部は全3巻、中部は全4巻、相応部は全6巻、増支部は全7巻です。

小部の構成

小部は以下の18の経典で構成されていますが、そのうちの3つは特に蔵外に分類されることが多いです。

1. 小誦経（Khuddaka-pāṭha）
2. 法句経（Dhammapada）
3. 自説経（Udāna）
4. 如是語経（Itivuttaka）
5. 経集（Sutta-nipāta）
6. 天宮事経（Vimāna-vatthu）
7. 餓鬼事経（Peta-vatthu）
8. 長老偈経（Thera-gāthā）
9. 長老尼偈経（Therī-gāthā）
10. 譬喩経（Apadāna）
11. 仏種姓経（Buddha-vaṃsa）
12. 所行蔵経（Cariyā-piṭaka）
13. 本生経（Jātaka）
14. 義釈（Niddesa）
- 14-1. 大義釈（Mahā-niddesa）
- 14-2. 小義釈（Cūḷa-niddesa）
15. 無礙解道（Paṭisambhidā-magga）
16. 導論（Nettipakaraṇa）
17. 蔵釈（Peṭakopadesa）
18. 弥蘭王問経（Milinda-pañha）

これらの経典は、教えの多様性と深さを物語っており、仏教徒にとって重要な指針となります。特に、法句経や本生経などは、道徳や倫理に関連する教えを詳述しており、日常生活における示唆を提供します。

小部の翻訳

小部の経典は、日本語を含む多くの言語に翻訳されています。例えば、南伝大蔵経の全訳や各経典の部分訳が多数存在しています。中村元による訳や、岩波文庫からの出版物は特に有名です。

また、現代の研究者による翻訳や解説も豊富であり、広く学ばれています。新たな視点からの理解が進み、古代の教えを現代の文脈に活かすための試みが続けられています。

おわりに

小部は、その名が示す通り様々な教えが含まれており、仏教の根本的な教理や実践に触れるための重要な資料を提供します。仏教徒や研究者にとって、これらの経典は学びの宝庫であり、時を超えて価値ある知恵を伝え続けています。

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