小野吉郎

小野吉郎：郵政官僚からNHK会長へ、そしてロッキード事件まで

小野吉郎（1902年1月2日-2006年4月）は、昭和時代を代表する逓信官僚であり、日本放送協会（NHK）の会長を務めた人物です。広島県広島市出身で、九州帝国大学法文学部卒業後、逓信省に入省しました。

逓信省でのキャリア

小野吉郎のキャリアは、札幌鉄道郵便局長、広島逓信局経理局長、中華民国臨時政府副郵務長（華北郵政総務計画課長）、大連関東逓信局長など、要職を歴任することでスタートしました。その後、郵政省に移り、貯金局長、簡易保険局長を歴任し、1956年には郵政事務次官に就任。郵政行政の中枢を担う立場に登り詰めたのです。この間、田中角栄元首相が進めた放送局の免許大量交付や新聞社とテレビ局の系列化などにも深く関わっていたと考えられます。

NHK会長への就任と辞任

1959年にNHK専務理事、1964年に副会長を経て、1973年には田中角栄元首相の抜擢により、NHK第11代会長に就任しました。しかし、会長在任中の1976年8月、田中角栄元首相がロッキード事件で逮捕されると、小野吉郎は保釈中の田中元首相を私邸に見舞ったことが大きな問題となりました。

この行動は国民からの激しい批判を招き、受信料支払い拒否運動や日本放送労働組合（日放労）の運動が活発化しました。結果、同年9月、小野吉郎は責任を取ってNHK会長を辞任しました。NHK会長が任期途中で辞任したのはこれが初めてであり、NHK史上最大の事件の一つとして記憶されています。その後、NHK会長は内部昇格が恒例となりました。

また、この事件において、『ニュースセンター9時』のキャスターだった磯村尚徳氏は、NHKが事件を積極的に報道しなかったことを視聴者に謝罪し、新しいキャスター像を確立したとされています。

その後の活動と生涯

小野吉郎は2005年までNHKの名誉顧問を務めていましたが、前年に発覚した不祥事を受け、顧問制度が廃止されたため退任しました。そして2006年4月、104歳で生涯を閉じました。

小野吉郎の生涯を振り返って

小野吉郎の生涯は、高度経済成長期における日本の郵政行政と放送界の歴史と深く関わっています。郵政省での活躍、NHK会長としての在任期間、そしてロッキード事件に関連した辞任劇は、日本の近代史における重要な出来事として記録されています。その波乱に満ちた人生は、後世に多くの教訓と考察の材料を提供するものと言えるでしょう。彼の功績と失敗は、現代のメディアと政治、そして組織運営を考える上で貴重な事例として記憶され続けるでしょう。 彼の生涯は、日本の高度経済成長期における官僚の役割と責任、そしてメディアと政治の関係性について深く考えるきっかけを与えてくれます。104歳という長寿を全うした小野吉郎の生涯は、日本の近代史を語る上で欠かせない重要な要素の一つです。

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