少女たちの羅針盤

概要

『少女たちの羅針盤』は、水生大海によって書かれた推理小説であり、第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の優秀作として認められました。この小説は、過去の殺人を探る新進女優と、演劇に情熱を注ぐ女子高生たちの青春を描く、ミステリーの要素を含む物語です。2009年に書籍として刊行され、2010年には映画化も実現しました。

来歴

本作は、推理作家の島田荘司が出身地の広島県福山市で主催する「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」でのデビュー作となります。2008年の第一回応募作品として最終選考に残ったものの、受賞は逃しましたが特別に優秀作として認定されました。元々の作品名は『罪人いずくにか』であり、島田の助言によって名称が変更され、2009年に原書房から出版されました。この作品は、その後も人気を集め、新装版や文庫版が次々と刊行されていきます。また、2010年には続編となる『かいぶつのまち』も発表されました。

あらすじ

物語の主人公である新進女優・舞利亜は、撮影現場で監督からかつての伝説的女子高生劇団「羅針盤」のメンバーではないかと疑われます。彼女はそれを否定しますが、実は彼女がその劇団に関わっていたことを誰も知らないはずでした。しかし撮影が進むにつれて、舞利亜は改訂された台本が彼女の過去に触れた内容に変わっていることを知ります。さらには、自分を狙ったメッセージが控室に残されていることに気付きます。

4年前、高校の演劇部に所属していた楠田瑠美は、部内での対立をきっかけに独自の劇団「羅針盤」を立ち上げることを決意します。同じくメンバーの北畠梨里子や来栖かなめと共に、演技力の高い江嶋蘭をスカウトして活動を開始します。劇団名は、これら4人の名前に東西南北の漢字が含まれていることから由来しています。

「羅針盤」はストリートでの公演を重ね、観客からの支持を得るものの、グランプリを獲得することが困難であり、活動に支障が生じます。その中で、メンバーたちは各自の抱える問題に直面しながらも演技に打ち込み、成功を収める姿が描かれます。しかし、突如として襲った悲劇的な事件が劇団の運命を変えてしまいます。メンバーの一人が精神的な苦痛に苦しみ、自ら命を絶つ事件が発生し、そのことが劇団「羅針盤」の終焉を象徴する出来事となります。

物語は舞利亜の視点から進み、4年後の撮影現場で彼女が過去と向き合う場面へと繋がります。彼女の前には、かつての仲間や敵であった者たちが現れることとなります。

書誌情報

- 原書房からの初版が2009年7月9日に発行（ISBN 978-4562045020）
- 2011年には映画化に伴う新装版が発表され、2012年には文庫版が光文社文庫から刊行されました。

映画化

本作は、バラの町の文学賞作品として初めて映画化された作品でもあります。監督には長崎俊一が起用され、撮影は広島県福山市を中心に行われました。この映画は、地元の映画館で最終公演として上映されるなど、高い評価を受けました。

主要キャストとしては、成海璃子、忽那汐里、森田彩華、草刈麻有などが出演しており、それぞれが個性的な役柄を演じています。また、一般市民から募集されたエキストラも参加し、地域とのつながりを大切にした制作過程が魅力です。

『少女たちの羅針盤』は、演劇と青春、友情、そして過去への様々な問いかけが詰まった作品であり、多くの読者に深い感動と考察を提供しています。

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