尚益王

尚益王

尚益王（しょうえきおう）は、1678年12月8日（康熙17年10月25日）に生まれ、1712年8月16日（康熙51年7月15日）に薨去した人物です。琉球王国第二尚氏王統における第12代国王として、1710年から1712年までの期間、王位に就きました。第11代国王である尚貞王の孫にあたり、中城王子尚純の子として生まれました。

尚益王の生涯において特筆すべき点の一つとして、彼が先天的な口唇裂（いわゆる兎唇）であったことが挙げられます。この事実に関連し、興味深い歴史的事実が伝えられています。尚益がまだ王位を継ぐ前の王孫であった頃、祖父である尚貞王の治世中の出来事として、魏士哲や高嶺徳明といった琉球の医官が清国へ派遣され、口唇裂の外科的修復術である「補唇術」を学んで帰国したという記録があります。この技術導入の背景には、当時幼少であった尚益の口唇裂の治療を目的としたものであった可能性が極めて高いと考えられています。これにより、琉球における医療技術の一分野、特に形成外科的な手技が向上したと言えるでしょう。

また、尚益王の口唇裂に関しては、彼の人となりや振る舞いに関する伝承も残されています。王は口元の傷跡を目立たなくするために、成人後は立派な口髭を生やしていたと伝えられています。このため、王の顔貌に親しく接していた者であっても、特に彼の子息たちは、父である尚益王が口唇裂であったという事実を知らなかったという逸話が語り継がれています。これらの伝承は、尚益王が自身の体の特徴とどのように向き合っていたかを示唆するとともに、当時の社会における口唇裂への認識や、それを隠そうとする王の個人的な心情をうかがい知る手がかりとなります。

家族構成

尚益王には、王位継承者となる男子をはじめ、複数の子女がいました。その家族構成は以下の通りです。

父：尚純（中城王子）
母：聞得大君加那志（号は義雲）。
妃：聞得大君加那志（号は坤宏）。彼女は毛氏伊野波殿内七世である伊野波盛紀の四男、具志川親方盛昌を父に持ちます。
夫人：西之按司。彼女の父は国頭親方朝姿です。
妻：
宮城阿護母志良礼（号は慈雲）。父は田場掟親雲上兼忠。
知念阿護母志良礼。父は孫氏支流崎山筑登之親雲上嗣長。

尚益王とこれらの女性たちの間には、以下の子女が生まれました。

長男：尚敬。中城王子朝系。母は妃。後に琉球王国の第13代国王として即位し、国の安定に努めました。
次男：尚徹。北谷王子朝騎。母は妃。童名は真蒲戸金、号は原仁。1703年8月6日（康熙42年）に生まれ、1739年2月18日（乾隆4年）に没しました。大村御殿の二世として、同家へ養子に入りました。
長女：嘉手苅翁主。母は妃。美里殿内八世の当主である美里親方安承の妻となりました。
次女：古波蔵翁主。母は妃。毛氏豊見城殿内十世である豊見城親雲上盛邑に嫁ぎました。
三女：冨盛翁主。母は妻の一人である慈雲。童名は思武樽金、号は惟芳。1704年3月4日（康熙43年）生まれ、1737年8月23日（乾隆2年）没。翁氏支流七世の当主である佐久真親方盛胤に嫁ぎました。
* 四女：内間翁主。母は慈恩。馬氏小禄殿内八世の当主である永本親雲上良隆に嫁ぎました。

尚益王は短い治世でしたが、次代の尚敬王に王位を譲り、その後の琉球王国の発展の礎を築くことになります。彼の治世における特異な身体的特徴とそれにまつわる医療技術の導入や伝承は、当時の琉球社会の一端を知る上で興味深い要素となっています。

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