尾崎ムゲン

尾崎 ムゲン（おざき むげん）は、1942年4月24日にこの世に生を受け、2002年10月2日に永眠した日本の教育学者、そして教育史研究者です。愛知県で生まれ育ち、その学問的な探求の中心に据えたのは近現代日本の教育史でした。

学歴とキャリア

尾崎氏は、教育学の研究を深めるために京都大学教育学部で学びました。学士課程修了後、同大学院教育学研究科に進み、博士課程において所定の単位を取得して退学しています。大学院での学びを通して、教育史研究者としての基礎を築き上げました。

その後、研究者としてのキャリアをスタートさせ、大阪女子大学学芸学部で教鞭をとりました。ここではまず助教授として、後に教授として、教育学に関する専門知識と研究成果を学生たちに伝えています。大阪女子大学での経験を経て、さらに研究と教育の場を関西大学文学部へと移しました。関西大学でも教授として、多くの後進の指導にあたりながら、自身の研究活動を精力的に続けました。

研究分野と主な業績

尾崎ムゲン氏の専門は、一貫して近現代日本の教育史でした。この広範な分野の中でも、特に戦後日本の教育がたどった道のり、日本資本主義の発展と教育制度・教育思想との複雑な関係、そして近代日本における教育改革の歴史と現状に深い関心を寄せ、独自の視点から分析を行いました。

その研究成果は、多くの著作として結実しています。単著としては、戦後民主主義教育の導入とその後の展開に対する批判的考察を展開した『戦後教育史論 民主主義教育の陥穽』（1991年、インパクト出版会）、日本資本主義社会の形成過程で教育がどのような役割を果たし、教育のあり方がどのように規定されてきたかを探究した『日本資本主義の教育像』（1991年、世界思想社）、そして近代以降、特に産業化社会への対応の中で日本の教育が経験してきた変遷と改革の歴史を130年にわたって概観した『日本の教育改革-産業化社会を育てた130年』（1999年、中公新書）などがあります。

また、単著の他にも、他の研究者との共同作業による編著や監修も手掛けています。岡村達雄氏と共編著として上梓した『学校という交差点』（1994年、インパクト出版会）や、筧田知義氏、若原道昭氏と共に監修を行った教育学の基礎に関する書籍である『教育の原理と課題』（2000年、昭和堂）などがあり、教育学の様々な側面に対する貢献がうかがえます。これらの著作は、近現代日本の教育が抱える本質的な問題やその歴史的背景を理解する上で重要な資料となっています。

逝去

尾崎ムゲン氏は、2002年10月2日午前9時6分、心不全のため京都市左京区の病院で惜しまれつつも永眠しました。享年60歳でした。その早すぎる死は、日本の教育史研究分野において大きな損失となりましたが、氏が生涯をかけて探求した近現代日本の教育に関する研究成果は、今なお多くの研究者や教育関係者にとって重要な示唆を与え続けています。氏の研究姿勢と業績は、日本の教育史を深く理解するための礎石として、後世に引き継がれています。

氏の論文については、CiNiiなどの学術情報データベースでその一部を確認することができます。

（出典・脚注に関する情報は原文に倣い省略します。）

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