尾崎一雄

尾崎一雄について

尾崎一雄（おざき かずお、1899年12月25日 - 1983年3月31日）は、日本の小説家として知られ、昭和期における私小説の代表的な作家です。三重県に生まれ、早稲田大学文学部国文科を卒業後、著名な作家である志賀直哉に師事しました。

彼の生い立ちは、祖父の代まで神官を務めていた家庭に育ち、父親は東京帝国大学卒業後、教育者として活躍していました。高校時代に志賀直哉の作品に触れ、作家を志す決意を固めました。その後、彼は早稲田大学で学びながら、同世代の政治家河野一郎と交流を持ち、志賀直哉との関係を深めていきました。

文学活動の開始

1925年に同人雑誌『主潮』に短編小説『二月の蜜蜂』を発表し、新進作家として注目を集めましたが、その後は約5年間の停滞期を経験します。この理由として、当時流行していたプロレタリア文学の影響や、志賀直哉に似たスタイルを模索した結果、自己のスタイルを見いだせなかったことを挙げています。

彼の初婚は不成功に終わり、その後1931年に結婚した山原松枝との出会いをきっかけに文壇に再登場し、志賀直哉からの仕事を得ることで経済的にも安定しました。

主な業績

1937年には短篇集『暢気眼鏡』で第5回芥川賞を受賞し、作家的地位を確立しました。この作品は、彼の独特のユーモアや、人生に対する考察を織り交ぜた心境小説として高く評価されています。

1944年には病気のため故郷の下曽我に疎開し、この地で起伏のある作家生活を続けました。彼の作品は、卓越した観察眼を特徴としており、自然や日常の出来事に対する深い洞察が反映されています。特に晩年の作品は、心境小説の典型としての側面を持ち、随筆とも言える自由な表現が目立ちます。

三島由紀夫は彼の作品を「着流しの志賀直哉」と表現し、その文体やテーマ性の独自性を認めました。

代表的な作品

尾崎一雄の代表作には、短篇集『虫のいろいろ』や、『美しい墓地からの眺め』、自伝的要素を持つ『あの日この日』などがあり、晩年に至るまで数多くの文学作品を発表しました。彼の文学は、死や存在、自然との調和をテーマにし、時折ユーモラスな筆致で人間の本質に迫ります。

1983年に亡くなるまで、彼は多彩なジャンルで執筆を続け、その全ての作品は作家としての彼の深い内面と社会に対する視点を反映しています。尾崎一雄全集が1982年から1986年にかけて刊行され、彼の文学的遺産を包括的に知る手がかりとなっています。

尾崎一雄の影響

現代の日本文学にも大きな影響を与えた尾崎一雄は、文学の枠を超えて、彼の人生を描いた回想録や対話集も発表しています。その影響を受けた作品や文献も多く、作家としての足跡は後世の作家たちにも引き継がれています。彼の文学観、自然への愛、そして人間の心を掘り下げる姿勢は、現在でも多くの読者に響き続けています。

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