居民委員会

居民委員会とは

居民委員会は、中華人民共和国の都市部において、地域社会に設置されている住民組織です。日本の町内会に相当するものと捉えられ、住民による相互扶助を目的とした「大衆的自治組織」としての側面を持つ一方、行政系統の末端組織として、政府の保護を受けながら行政補助機能を担うという二面性を有しています。

「都市居民委員会組織法」では、居民委員会は「自己管理、自己教育、自己奉仕の末端大衆自治組織」と定義されています。この定義が示すように、住民自身が主体となって地域を運営していくことが期待されています。

歴史的背景

居民委員会の歴史は、中華民国時代の隣保制度である保甲制度にまで遡ることができます。中華人民共和国成立後、全国の都市に居民委員会が設置され、1954年の「都市居民委員会組織条例」によってその役割が明確化されました。その後、1989年には「都市居民委員会組織法」が新たに採択され、現代の居民委員会の法的根拠となっています。

社区建設との関連

居民委員会は、中国共産党と政府の主導のもとで進められている「社区建設」において重要な役割を担っています。社区建設とは、社区の力を活用し、社区資源を有効利用することで社区機能を強化し、住民の生活水準を向上させることを目的とする取り組みです。この過程において、従来の「単位（ダンウェイ）」制度下では周縁的な存在であった居民委員会の機能が強化されました。

行政補助機能

居民委員会は、行政の末端組織である「街道弁事処」の指導を受け、様々な行政活動を遂行しています。具体的には、憲法、法律、法規、国家政策の宣伝、計画出産の管理、社会治安の維持、流動人口の管理、失業者の就業斡旋、青少年教育などが挙げられます。これらの活動は、街道弁事処から下達される行政的な任務であり、居民委員会が地域住民と行政との橋渡し役を担っていることを示しています。

福祉サービスと地域活動

行政活動以外にも、居民委員会は住民への福祉サービスや文化活動も行っています。ボランティア組織を運営し、社区の環境美化、衛生管理、高齢者支援（特に独居老人である「空巣老人」への支援）など、地域に根ざした活動を展開しています。これらの活動を通して、住民の生活を支え、地域社会の連帯を強化する役割も果たしています。

まとめ

居民委員会は、中国の都市部において、住民の自治組織としてだけでなく、行政の末端組織としての役割も併せ持つ、非常に重要な存在です。行政と住民の間に立ち、地域社会の発展と住民生活の向上に大きく貢献しています。

参考文献

國谷知史・奥田進一・長友昭編集『確認中国法用語250WORDS』（2011年）成文堂
上村幸治著『中国路地裏物語-市場経済の光と影-』（1999年）岩波新書
愛知大学現代中国学部編『ハンドブック現代中国（第4版）』（2013年）あるむ
藤井省三著『現代中国文化探検―四つの都市の物語―』（1999年）岩波新書

関連項目

* 社区

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