屋根神

屋根神（やねがみ）

屋根神、または屋根神様とは、家屋の屋根上に祀られる神々のことを指します。この伝統は特に愛知県や岐阜県で見られ、地域住民にとって身近な存在とされています。

特徴

主に古い家屋のひさし屋根や軒下に設置される屋根神は、火伏や厄除けを目的として、秋葉神社や津島神社、さらには伊勢神宮や地元の氏神（名古屋では熱田神宮）を祭ります。これらは町内の小組織によって輪番制で祭祀が行われます。「屋根神」という名称は、これらの神々が高い位置に祀られることに由来していますが、地域によっては「秋葉さん」や「お天王さん」といった異なる呼び名でも親しまれています。現在は、祭祀の安全性から地上に降ろされた社も多く存在しますが、その名残から「屋根神」との呼称は広く用いられています。

名古屋市の中でも、特に西区には屋根神が多く残っており、2009年の調査では136社の屋根神が確認されました。これらの調査は、1976年の芥子川律治の著作や、1992年の山地英樹の写真集によって行われ、市内の屋根神の所在が明らかにされました。都市化の進展や地域共同体の縮小、高齢化などにより、屋根神の数は減少傾向にあります。

祭礼

屋根神の祭礼は、町内や隣組の小組織によって持ち回りで行われます。その形式は様々で、数十戸が集まって行う大規模な祭典から、隣同士の数戸による小規模な祭りまで、地域の特性に応じた形が存在します。主要な祭礼としては、正月、月次祭（毎月1日と15日）、熱田尚武祭、津島祭、秋祭、秋葉祭があり、うち秋祭は地域の氏神を祭る重要な行事です。

祭礼の際には、社にはしごをかけて供物を供え、祭神に関するマークが施された紫の幕を掛けるなどして、地域の住民が協力し合って行います。最近では安全面から、台の上に供物を置くスタイルが多くなっています。

起源

屋根神に関連する文献は少なく、その起源は不明です。一般には、庶民が社を設置するためのスペースを確保できなかったため、気軽にアクセスできる高所に祭神を設置したのではないかとも言われています。また、津島信仰と秋葉信仰のいずれかに起源を持つという説も提唱されていますが、具体的な解明には至っていません。

屋根神が見られる地域

屋根神は主に愛知県と岐阜県に分布しています。愛知県内では名古屋市、一宮市、犬山市、清須市などに見られ、岐阜県内では岐阜市、大垣市、関市など多くの地域で確認されています。

参考文献

この文化に関する文献も増えつつあり、文化財としての評価が高まっています。特に、芥子川律治の『屋根神さま』や、山地英樹の写真集『なごやの屋根神さま』などは、地域の文化や歴史を知る上で重要な参考資料となっています。

屋根神は地域の文化遺産として、そしてコミュニティのアイデンティティとして、今後も大切にされていくことでしょう。

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