屯田

屯田とは

屯田（とんでん）とは、兵士に新しく耕地を開墾させ、戦時には軍隊に所属させながらも、平時には農業を行わせて自活させる制度、またその場所や地域を指します。この制度は、食料の確保と兵力維持を同時に行うことを目的として、歴史上様々な国や地域で採用されてきました。

中国における屯田

中国では、前漢の武帝が辺境防衛のために兵士に農耕を行わせたのが始まりです。後漢末期には、荒廃した土地を一般の民に耕作させる「民屯」が導入され、魏の曹操によって本格的に実施されました。この制度は、軍事組織と結びついた形で農民を統治し、食料の安定供給に貢献しました。また、司馬懿の提言により、呉・蜀との国境付近でも軍屯が展開され、魏の優位を築く一因となりました。蜀でも諸葛亮らが漢中で屯田を行っています。晋代になると民屯は廃止されましたが、国家が土地と人民を直接管理する試みは、後の均田制にも影響を与えたと考えられています。

また、モンゴル帝国の千戸制を模倣した軍戸制が元代に復活し、明代には衛所制として大規模に実施されました。さらに広義の屯田は、唐宋時代以降も辺境防衛の兵糧確保の手段として現代まで行われています（例：新疆生産建設兵団）。

日本における屯田

日本では、明治時代に北海道で屯田兵制度が導入され、本格的な開拓が行われました。屯田兵は、開墾作業に従事する傍ら、有事の際には兵士として戦う役割を担いました。札幌市北区の「屯田」や中央区の「東屯田通」「西屯田通」といった地名は、屯田兵が駐屯していたことに由来します。

ロシアにおける屯田

19世紀初頭のロシアでは、アレクサンドル1世の主導で屯田兵制度が開始されました。兵士を農民化する、あるいは農民を兵士化するという両方向から屯田兵が創出され、軍務と農業を兼務させられました。当初は強制的な移住を伴い、過酷な環境下での生活を強いられました。屯田兵は、軍服の着用を義務付けられ、厳格な規律の下で生活しました。特に、農民を兵士にする方式は、農奴制下で重い負担を強いられていた農民にとって、さらに過酷なものであったため、反乱が頻発しました。1857年にアレクサンドル2世によってこの制度は廃止されました。

古代日本の皇室領としての屯田（みた）

屯田（みた）は、古代日本において大王が直接支配した田地を指します。この屯田を管理するために屯倉が設けられました。大宝律令では屯田、養老律令では官田と呼ばれています。大和・摂津に30町、河内・山城に20町と規定されていました。各地に残る「富田」（とんでん、とんだ、とみた）という地名には、屯田が転じたものが多く存在すると考えられています。

このように、屯田は時代や地域によって異なる形態を持ちながら、食料確保と兵力維持という共通の目的を果たそうとした制度であるといえます。

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